虐待などを受けて親元を離れ、児童養護施設などで育った若者の未来を支える「若者おうえん基金」が設立された。首都圏若者サポートネットワークの池本修悟事務局長らが30日、会見を開き、18歳を過ぎて進学、就職に至ったあとも自立に苦しむ若者たちのサポートを誓った。

社会的養護のもとで育った子どもは18歳になると原則として施設からの自立を求められるが、児童養護施設出身児の大学、または専修学校へ進学した者の26・5%が4年以内に中退し、就職者も48・7%が3年以内に離職するなど、両親をはじめとする家族の後ろ盾がないまま社会に出た若者の自立の難しさが浮き彫りとなっている。

池本事務局長は、そうした18歳以上の若者への国の支援が薄いことをポイントに挙げ「退所者の生活がかなり崩れてしまっている現状がある。行政のお金だと使いづらい部分もあり、施設職員が退所した若者へのサポートに自腹を切っている例も多い」と話す。社会的養護を受けた若者を自立させるには「伴走者」と呼ばれる支援者の存在が不可欠だとし、そうした伴走者を金銭的に支援するため、同基金の設立に至ったと説明した。

首都圏若者サポートネットワークの宮本みち子委員長は「社会的養護のなかで育った子どもたちは、誰の助けもなしに自立しなければならない厳しい現実に直面している。子どもたちは良い環境に恵まれれば大きな力を発揮します。そのためには『私たちの子ども』という温かいまなざしを持って育ちを支援する社会であることが必要です」とコメント。基金は同ネットワークと連携する3県の生活クラブ生活協同組合での組合員カンパやクラウドファンディングなどで募り、18年度の目標額は2000万円に設定した。募金額の85%を同基金の助成にあて、残りの15%は運営費として使用する。助成後はヒアリングなどの調査も実施していくという。

助成対象は東京、神奈川、埼玉の3県で社会的擁護のもとで暮らす若者(おおむね30歳まで)を支援する自立援助ホームなどの職員らで、今年9~11月末までの期間で助成公募を行い、審査、選考の上で来年1月に助成を実施する予定。

会見には池本事務局長、宮本委員長のほか、池田徹委員、早川悟司委員、伊藤由理子委員が出席した。