北海道全域停電の影響で、北海道新幹線の始発駅JR函館駅も機能が停止した。函館市のJR函館駅には、国内外の観光客300人以上が集まり、床に横になるなどして休みながら、復旧を待った。

宮城県名取市から妻と旅行に来ていた男性(70)は「ホテルの延泊はできたが、なんの情報もないので、駅に来てみました」と疲れた様子。東日本大震災で実家が津波で流された妻(67)は「揺れた後、すぐに津波が怖くなり、ニュースを見ようにもテレビがつかず、不安でした」と話した。

東京都足立区から長女(23)と旅行にきた会社員女性(50)は函館と札幌を観光する予定が、札幌行きの電車が動かず、函館に足止めとなった。「航空券のある9日まで3日間。ホテルは延泊できたが、食べ物と水がなく、どうしていいか分からない」と話した。

駅前の飲食店街もほとんどが停電で休業するなか、ガス釜で米を炊き、海鮮丼を格安で提供した「いっせきにちょう」には行列ができた。高田喜美孝社長(53)は「うちも店を閉めようと思ったが、観光客のみなさんがおなか減らして歩いてるので、見てられなかった」。朝から昼ごろまでに食事がとれなかった観光客100人以上が訪れた。店外にある大型冷凍庫も停電で「ダメ」。カニやマグロなどの食材が解け「損害は200万くらいになりそう」というが、次々に訪れる客に笑顔で対応した。

自家発電機のある一部のガソリンスタンドには車が行列を作り、長時間待っても給油量は10リットルに制限された。信号も停電で止まり、多くの銀行も休業。学会のために函館に来ていた札幌市の大学教員向井茂さん(50)は避難所となった市立青柳小の避難。「停電だけでこれだけ多くの人が困ってしまう。電気がなくなった時の都市機能のもろさを痛感させられました」と話した。