東京地裁は20日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで再逮捕された日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告(64)と前代表取締役グレゴリー・ケリー被告(62)の勾留延長を認めない決定をした。東京地裁が東京地検特捜部の勾留延長を認めないのは極めて異例。東京地検は準抗告をした。裁判所がこれを棄却し、弁護士の保釈請求が認められれば、21日にも保釈される可能性がある。

今月10日に再逮捕されたゴーン被告とケリー被告の勾留は20日が期限で、特捜部は勾留の延長を求めていたが、地裁は21日以降の勾留を認めない決定をした。

11月19日の逮捕が11年3月期~15年3月期の役員報酬を計約48億6800万円過少に有価証券報告書に記載した容疑、10日の再逮捕が16年3月期~18年3月期の役員報酬を計約42億3400万円過少に記載した容疑で、同じ過少記載の容疑を期間を分けただけであることや、最初の逮捕以来、身柄を拘束し、弁護士の同席を許さずに取り調べを続けていることに海外から批判が高まっていることも考慮したとみられる。

東京地検の久木元伸次席検事は「必要と思って(勾留)請求した。適切に対処したい」とコメントを出した。地検は決定を不服として20日夕、準抗告(不服申し立て)した。一方、ケリー被告の弁護士は20日夜、21日にも東京地裁に保釈を請求すると明らかにした。ゴーン被告も21日に保釈請求するとみられている。

東京地検特捜部の勾留延長の請求を東京地裁が認めないのは極めて異例。東京地検幹部は「驚いている。証拠隠滅の恐れがある」と話し、準抗告が棄却され、地裁が弁護側の保釈請求を認めても、勾留延長と同じように準抗告して対抗する構え。最高裁への特別抗告も検討しているもようだ。ただ、裁判所がこれを退け改めて保釈を認めた場合、保釈保証金が納められればゴーン被告らは21日にも32日ぶりに東京拘置所から出ることになる。

保釈保証金は10億~十数億円とみられるが、04年のハンナン牛肉偽装事件での浅田満元ハンナン会長の20億円を上回り、史上最高額となる可能性もある。保釈後は住居を制限され、ルノー本社があるフランスなどへの渡航も制限される。ケリー被告ら事件関係者との接触も禁止される。