4月1日に日本囲碁史上最年少の10歳0カ月30日で初段になる小学4年生の仲邑菫さん(9)が20日、東京都内の日本棋院東京本院で、昨年のワールド碁女流最強戦準優勝の台湾の黒嘉嘉(コク・カカ)七段(24)と記念対局を行い惜敗した。

真っ向勝負を挑み、228手までで敗れた菫さんは「うまく打てた」と手応えを口にした。黒七段も「間違いなく世界チャンピオンになれる」と太鼓判を押した。

プロ入り発表後、韓国の男女トップ棋士を含め世界の強豪を相手に3連敗となったが、菫さんは手応えをつかんでいた。感想を聞かれると、迷うことなく「うまく打てた」と答えた。勝てるかも知れないと思ったかと聞かれると「はい」と、はっきり答えた。

菫さんは母親の幸さんに、対局ごとに「次は勝つ」と誓っていたという。強気な言葉どおり、女流棋士世界最強戦で準Vの黒七段に対し、先手のみというわずかなハンディだけで真っ向勝負を挑んだ。一歩も引かない戦いを展開も、最後の最後に失速。敗因を聞かれると「寄せで(失敗した)」と明確に口にした。

黒七段も「9歳で、これだけ打てるのは本当にすごいこと。間違いなく世界チャンピオンになれると思います。これだけ強いのは将来が楽しみ。夢がある」と手放しで褒めた。菫さんの強みについては「9、10歳の子どもたちは、碁を打つ時に、ずっと座っていられない。それが出来ていて、対局中も、すごく冷静…なかなか出来ないこと。大きな強みになる」と分析した。台湾でトップモデルとしても活躍する黒七段の笑みに菫さんも笑顔を返した。

1月5日のプロ入り発表後も、7歳から修業する韓国の韓鐘振(ハン・ジョンジン)道場で囲碁を磨く。最近も1週間ほど修業していたが、今回の対局が決まったため18日に帰国し、前日19日に大阪から上京した“強行軍”で臨んだ。

対局後、大勢の報道陣に囲まれ、矢継ぎ早に質問されると、はにかんだり「分からない」と答えに窮する場面もあった。ただ、自分と同じ4月1日付で初段になる、小学6年の上野梨紗さん(12)と対局したいかと聞かれると、うなずいた。なりたい棋士は? と聞かれると「世界で戦える棋士」と、ハッキリ答えた。

国内での記念対局は、今回が最後になるという。今後、国内では厳しい公式戦の戦いという“大海原”に船出する。【村上幸将】