ラグビーW杯開幕まであと3日と迫った。開催地の1つ、埼玉県熊谷市は、熊谷ラグビー場がJR熊谷駅から約3・5キロ離れるなど「アクセスの悪さ」が指摘されてきたが、市は埼玉県警をはじめ各所と調整を続け、シャトルバスをはじめとしたアクセス網を構築。本番初戦となる24日のロシア-サモア戦と同じ午後7時15分キックオフだった日本-南アフリカ戦(6日)では、2万2258人の観衆で満員となったが、交通トラブルはなかった。本番に向け、準備は万全だ。

   ◇   ◇   ◇

日本がW杯前最後のテストマッチで敗れた夜、熊谷市は“勝利”した。JR熊谷駅から熊谷ラグビー場がある熊谷スポーツ文化公園を結ぶ「ラグビーロード」を時間帯によって通行止めにする交通規制を敷き、約350台のバスを投入。熊谷駅とJR籠原駅からのシャトルバス、東武線の羽生駅、太田駅、森林公園駅からの予約制バスなどを合わせ、1万6967人を会場に送った。

試合終了後は観客が一斉に競技場を出たため、熊谷駅行き乗り場は「1時間待ち」とアナウンスされたほど大混雑した。それでもバスの回転の速さと、埼玉県警の場内整理で終了から40分ほどで待機時間は30分に減り、1万5904人(いずれも数字は熊谷市調べ)の乗客を無事に送った。家族で観戦に訪れた男性は「アクセスはスムーズ。バスに乗る際、ベビーカーを優先した配慮もありがたい」と笑みを浮かべた。

15年3月に開催都市に決まった段階で、最大の問題はアクセスだった。熊谷スポーツ文化公園は常設、臨時駐車場合わせて約2800台しか止められず、イベントの際は停車できない車で幹線道路が渋滞し、路線バスも到着できない“負のスパイラル”に苦しんできた。そのため市はW杯に向けて埼玉県警と4年話し合いを続け、主要幹線道路の信号を調整し、交通規制する体制を構築した。

ナイターの際は、東京方面への終電に間に合うか否かも観客の不安の種だった。そこでJR東日本と協議して、在来線は午後11時11分発の終電後に同30分発の臨時便が、上越新幹線も通常は熊谷を通過する新潟発東京行きを臨時停車させ、熊谷を午後11時4分に発車する措置が取られた。

綿密な交通計画の裏には、17年に隣の群馬県太田市を本拠地とするトップリーグ・パナソニックのホーム戦6試合を開催、観客がどのような交通機関で来場するか調査するなど地道な努力があった。熊谷市W杯推進室の島村英昭室長(58)は「11年に誘致活動を始めて9年目。環状線工事も前倒しになって道路の面積が広がり、警察の協力態勢も整った。W杯をやった町じゃなく、真のラグビータウンになったという取り組みをしていかないと。大会後のレガシー作りという意味でも、種まきから水やりの段階まで来た」。1週間後に迫ったロシア-サモア戦に向け、手応えを口にした。【村上幸将】