ファッションデザイナーのドン小西氏(69)が、23日に発表された東京オリンピック(五輪)・パラリンピック日本代表選手団の公式服装について「そつなく無難。斬新さやオリジナリティー、主張がない。マーケティング重視の今の日本を象徴している」と印象を話した。

「ニッポンを纏(まと)う」を共通コンセプトに、開会式用は白いジャケットに赤いパンツやキュロット、式典用はネイビーのジャケットに白いパンツやキュロットを合わせるスタイル。紳士服大手のAOKIが手掛けた。

公式服装の良い点に「着用した選手も『動きやすい』『涼しそう』と感想を言っていたハイテク素材」を挙げた。一方で「一生の思い出を残すはずのものなのに、目先だけを考えている。例えば(3つに折ったポケットチーフ)『スリーピークス』を採り入れるなど、日本だけで今、流行っているものを次々と取り入れることが薄っぺらい。国旗の色が変わらず取り込まれているだけで、1964年の前回東京大会から進化していない」と指摘した。

選手団公式服装の“先進国”をフランスやイタリアとした上で、優れた点に「時代性、ファッション性、メッセージ性」の3つを挙げた。

「さりげなくメッセージ性を添えるにはデザイン力が必要。それにたけているのはやはりデザイナーだ。例えば近年、米国はラルフ・ローレン、イギリスはステラ・マッカートニーが代表選手団の公式ユニホームを手掛けているように、自国を代表するデザイナーに依頼しなくてはダメだ」と持論を展開した。

今回の日本代表の開会式用ジャケットボタンにはエンブレム、式典用ジャケット金ボタンには前回東京大会をイメージしたデザインが施されるなど、細部にもこだわっている。小西氏は「ボタンに力を入れても、広い会場では分からない」と指摘した。

最近の日本公式服装の好例に、昨年のラグビーW杯日本大会で着用した日本代表のジャージーを挙げた。「白と赤の普通のボーダーだけど、デザイン性を加えたことで、甲冑(かっちゅう)みたいに見えて勢いを感じさせ、とても良かった。シンプルにアレンジすればいい。凝ったことをやる必要はない」と強調。「売れている要素を詰め込み、一般大衆に受ければ良くて、サクッと作りましたといった個性のなさはさみしい限り。オレがやり直しに手を挙げたいよ」と話した。