宮城・山元町内の徳泉寺で11日、本堂等の完成を祝う落慶法要と東日本大震災物故者供養法要が行われた。早坂文明住職(69)は「新型コロナウイルスの影響で実施すべきか迷ったが、3月11日は普通の日ではない。何としてもこの日をメモリアルにしないといけない」と強い気持ちだった。

徳泉寺は海岸から約300メートルの地点に、同町内の徳本寺の末寺として約360年前に建てられた。震災直後の津波で本堂等がすべて消え去ったが、11年4月に寺から約2キロ離れた水田で本尊の釈迦(しゃか)像が奇跡的に発見され、同地区に再建することを決めた。 早坂住職は震災一周忌のイベントで、はがきに復興に込めた1文字を書く「はがき一文字写経(納経料5000円)」を開始。数日後、同イベントに参加していた放送作家の永六輔さん(享年83)が1人目として納経し、「みんな反応するのか分からない状況で発信して、最初が永さんだった。もしかしたらやっていけるかもしれない」と、9年で約2000通が全47都道府県から届き、約3800万円の納経料は本堂の総工費に充てられた。

来年で震災から10年が経過する。早坂住職は「震災からどのような経緯で建てられたのかを後生に伝えていきたい」。全国から支援を受けて再建された徳泉寺が、同町のシンボルになる。【相沢孔志】