安倍晋三首相は14日、新型コロナウイルス対策に関し、先月29日以来、2度目となる会見を開いた。

世界的感染拡大への懸念から、延期論がある東京オリンピック(五輪)・パラリンピックについて「予定通り開催したい」と強調、26日の聖火リレー国内出発式に立ち会う意向も示した。一方、景気冷え込み対策で消費税率5%減税の可能性を問われ、否定はしなかった。

途中打ち切りで批判された前回の教訓か、今回は質問数も増え、時間も延長。卒業生への祝辞まで述べるサービスをみせた。

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新型コロナウイルス感染拡大を受けて浮上してきた東京大会延期論。首相は、「招致決定から成功に向けて全力を挙げてきた。日本中がワンチームとなり、準備を進めている」と主張。1年の延期を提案したトランプ米大統領と13日に電話会談したが、開催への協力で一致し「延期や中止は一切話題になっていない」と述べ「とにかく感染拡大を乗り越え、無事予定通り開催したい」と強調した。

通常開催への準備を後押しするためか、今月26日、福島県から始まる聖火リレーの出発式に立ち会いたいとの意向を示した。

大会開催の時期は、政治日程にも大きく影響する。来年9月に自民党総裁の任期が迫る首相にとって、今年9月のパラリンピック後は、衆院解散の有力なタイミングとみられている。延期や中止なら今後の戦略も狂う。首相の政治戦略上も、通常開催に越したことはない事情が見え隠れする。

首相は、改正新型インフルエンザ等対策特措法成立で可能になった緊急事態宣言について、現在は出す状況にはないと述べた。感染状況は「依然、警戒を緩めることはできない」として、国民に自粛継続などの協力を要請。対応が後手後手との批判には「さまざまな手を打った結果、一定程度持ちこたえているのではというのが、専門家会議の評価だ」と、強調した。

感染拡大で景気は悪化し、自民党内でも消費税減税の議論が出始めている。米経済紙に、消費税率を5%にする可能性を問われた首相は、否定はしなかった。「何をすべきかは、提言も踏まえながらさまざまな可能性を想定し、必要な政策を行う」と含みを残した。

首相が打ち出した一斉休校や大規模イベント自粛は、国民生活を混乱させた。この日は唐突に「卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます」と祝辞を口にしたり、甲子園出場が断たれた球児にも「悔しさは察するにあまりある」と述べるなど、「国民目線」の姿勢が随所に強調された。