東京五輪をめぐり「中止」や「延期」の観測が日々強まっている。仮に何らかの変更に迫られた場合、「オリンピック憲章」などの制度上はどうなのだろうか。

五輪は、国際オリンピック委員会(IOC)が定めるオリンピック憲章にのっとって行われる。いわば憲法だ。憲章の第5章では「オリンピアード競技大会(夏季)はオリンピアードの最初の年に開催され、オリンピック冬季競技大会はその3年目に開催される」と明記している。

「オリンピアード」とは「連続する4つの暦年からなる期間」と定義され、オリンピック・ムーブメントの理念を時間で示す大切な考え方といえる。「1年」も「1月1日から12月31日」と規定している。

あくまでも現行の憲章を踏まえれば、仮に「延期」を選択した場合でも、直近の開催は年内がリミットと解釈できそうだ。それより先に延期するなら憲章上は24年と考えられるが、既にパリに決定。28年もロサンゼルスに決まっている。

しかし憲章は、憲章改正などの重要な決議も、IOC総会で投票総数の3分の2の賛成があれば可能とする。また「オリンピック競技大会の開催日程はIOC理事会が定める」ともする。IOCは86年総会で、夏季と同年開催だった冬季大会を現行に変更。94年冬季リレハンメル大会は、92年アルベールビル大会の2年後の開催となり、夏季と冬季とが2年おきに行われている。

「中止」は過去に計5回ある。夏=1916年ベルリン、40年ヘルシンキ(東京返上)、44年ロンドン、冬=40年札幌、44年コルティナダンペッツォだが、すべて戦争が理由だった。感染症が原因になれば初めての事例となる。

【オリンピック憲章の主な関係部分】

▼第1章・6・付属細則・1=オリンピアードは連続する4つの暦年からなる期間である。それは最初の年の1月1日に始まり、4年目の年の12月31日に終了する。

▼第2章・18・3=総会の決議は、投票総数の過半数により採択される。オリンピズムの根本原則およびオリンピック憲章の規則の改正については、投票総数の3分の2の賛成を必要とする。

▼同・付属細則・4=総会での決議は、憲章の改正を含めすべて即時発効とする。

▼第5章・1・32オリンピック競技大会の開催・1=オリンピアード競技大会はオリンピアードの最初の年に開催され、オリンピック冬季競技大会はその3年目に開催される。

▼同・3=オリンピック競技大会の開催日程はIOC理事会が定める。