「アべノマスク」より「ラグビーノマスク」!? 昨年のラグビーワールドカップ(W杯)で史上初の8強に輝いた日本代表が愛用した靴下を製造する老舗メーカーが新型コロナウイルス感染拡大で慢性化したマスク不足解消の一助としてマスクを製造し、6日から販売をスタートさせた。抗菌、防臭加工の綿100%で日本代表の足元を支えた靴下同様に何度でも洗って使えるタフなラグビー仕様。新型コロナウイルスの拡大防止にトライする!

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政府が新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を固めた日、感染拡大の防止にトライするラグビーマスクもキックオフを迎えた。昨年のラグビーW杯で8強入りの快挙を果たした日本代表ラガーマンたちの足元を固めたソックスが、今度は新型コロナウイルス感染と闘う口元をがっちり固める。

日本代表ソックスを委託製造したのは昨年、創業70年の老舗靴下メーカー「タイコー」(長野市)で独自の技術力を高く評価され、1995年の第3回南アフリカ大会から7大会連続で日本代表を支えた。「感染防止に何か貢献したい」と同社常務の神田卓実さん(38)は3月中旬からノウハウを生かしたマスク生産に着手した。

体重100キロオーバーの猛者たちが激突する過酷な条件下で着用される靴下には耐久性と、同時に履き心地やフィット感が求められるが、同社では縫い目がないのに滑り止め機能があるなど高い技術力を誇る。マスクも靴下と同じ抗菌、防臭加工され、靴下同様に何度でも洗濯に耐えるタフなやつだ。それでいて縫製せずに織り上げられているので縫い目がなく、肌にソフトでやさしい。編み込まれているので「アミマスク」と命名された。

足のかかとや、指のカーブに合わせた立体的な製法で鼻からアゴへ、微妙なカーブにも自然にフィットするようになっていて、ずれにくい。培った技術力で、隙間が空きやすい従来の布マスクの弱点をカバーしている。同社では6日、2000枚(1枚1500円、税別)を同社の通販サイトで販売したが「申し込みが殺到し、5分ほどで完売しました」(神田氏)。

綿100%のため、ウイルスの侵入を完全にシャットアウトすることはできないが、せきやくしゃみなどによる飛沫(ひまつ)感染の予防には効果が期待できそうだ。同社では今後も1日300~400枚を生産し、販売していく。「使い捨てマスクは医療関係者の方に優先的に使ってもらって一般の方は再利用できるマスクを使っていただければ」(神田氏)と、慢性的となったマスク不足の解消に貢献したい考えだ。

ラグビー日本代表の快進撃を支えたソックスから生まれた「異業種マスク」が新型コロナウイルスの感染拡大防止に立ち向かう総力戦に参戦した。【大上悟】

◆タイコー 1949年(昭24)創業で靴下、サポーター、手袋などニット関連商品の企画開発する。足袋型ソックスやスポーツソックス、医療機器に分類されるニット製品などを自社で完全一貫生産をしている。本社は長野市下駒沢。

<異業種のマスク生産>

◆電機メーカー シャープは3月24日から、同社の三重工場で不織布マスクの生産を開始した。液晶パネルを製造している同工場のクリーンルームの空きスペースを活用し、新たにマスク用の生産機器を導入して製造ラインを新設した。当初の日産15万枚から日産50万枚を目指す。

◆子供服 子供服のブランド「ミキハウス」を展開する三起商行(大阪・八尾市)は抗菌、抗ウイルス加工をした子供用マスクを発売した。綿100%で約50回洗濯しても効果が続くという。公式オンラインショップのみで6日、販売すると直後に完売した。

◆農機具会社 鳥取市で農機具を扱う「大志」が、緊急時に備えて保管していた旧工場の設備を再稼働させてマスクの生産を行っている。元従業員らの協力を受けながら1日に1万~1万5000枚を製造している。

◆ブランド服縫製工場 

男性向け人気ブランド服を縫製する「マルチョウワークス」(秋田・大仙市)が3月上旬から試作を開始して1日約1000枚を製造している。

◆半導体製造装置の部品メーカー 東京技術研究所(川崎市)では耐熱性のあるアクリル製の特殊な布をマスクに転用して製造している。クリーンルーム用作業衣と同素材で耐久性もあり、マスクとして使用可能なことから本業の傍らで生産している。

◆ウエットスーツの製造会社 宮城・石巻市でダイビングやサーフィン用などのウエットスーツを生産する「モビーディック」がウエットスーツの素材を使ったマスク生産をスタート。

◆ジーンズ製造会社 高知・黒潮町の「じぃんず工房大方」がデニム製のマスクを製造販売している。何度でも洗濯可能な丈夫さが売りの素材で1日約500枚を生産している。