発明家のドクター・中松氏(91=本名・中松義郎)が、感染拡大が進む新型コロナウイルス対策の発明品を増産するため、工場を建設していることが18日、分かった。目からの飛沫(ひまつ)感染を防ぐ初のマスク「ドクター中松 スーパーメン SUPER M.E.N」に対し、医療機関や関係者からだけで1日数十件もの問い合わせが連日あり、医療関係者優先で増産を進めているが、間に合わない状況。それを受けて、都内のドクター中松創研内で、工場の建設に踏み切り、工事に着工した。

 中松氏は「発明の日」の18日、都内のドクター中松創研で日刊スポーツの取材に応じ「工場を建設中です。生産体制を上げます」と明かした。ドクター中松創研がある「ドクター・中松ハウス」の中庭「ドクター・中松コロシアム」には足場が組まれ、着々と準備が進められていた。ドクター中松創研は発明品を製造、販売してはいるが、あくまで研究所の位置付けで、ドクター・中松ハウスが2005年(平17)2月に完成して以来、棟内に工場を作るのは初めてだ。

 中松氏に工場建設を決意させたのは「大変どう猛な威力」と評する新型コロナウイルスの症状と「22年まで続くのではないか? との予測も出ている」と指摘するように、長期戦が予想されることへの危機感だ。

 中松氏は2月3日に、アルコールより毒性が低く、洗浄力と滅菌力がある「NAKAMAGIC(なかマジック)ウォッシュ」を発表したのを皮切りに、18日に発表した「安タッチ UNTOUCH」まで5つの新型コロナウイルス対策の発明を発表した。その中で、最も反響が大きいのが「ドクター中松 スーパーメン SUPER M.E.N」だ。透明板で顔全体を覆う溶接マスクのような形状で、目からの飛沫(ひまつ)感染を防ぐ画期的な仕組みが注目され、注文が相次いだ。洗って繰り返し使用できることも好評で、関係者は「作って出し、作って出しの状況。今は3週間待ち」と語った。

 購入希望や問い合わせが多いのは「医者をはじめとした医療関係者が多いですね」(中松氏)という。新型コロナウイルスの感染拡大が進み、感染症指定医療機関だけでは重症患者の入院を受け入れきれず、厚労省は感染症指定医療機関に加え指定期間以外での一般病床で対応できるところを探すよう求め、感染症指定医療機関以外の病院も患者の入院を受け入れている。そうした状況の中、ドクター・中松創研には「来週から患者を受け入れることになったが、用意が何もないから何とかして欲しい」という、医師の切実な声も寄せられているという。

 国内で広くマスクが不足している状況の中、政府はマスクの製造を促進するため「マスク生産設備導入支援事業費補助金」を設けた。中松氏は工場建設にあたり、コネクションがある政府関係者に同制度の利用を含め補助金、助成金を出して欲しいと打診したが、否定的な回答が返ってきたという。中松氏は「マスクには補助金を出すと言うが、助成金を頼んだら『ドクター中松 スーパーメン SUPER M.E.N』はマスクじゃないと。政府はお金を出さないのでね。自腹でやるしかない」と苦笑いした。

 「ドクター中松 スーパーメン SUPER M.E.N」発表後、一部で3Dプリンターで作った模倣品も登場している。頭にはめる枠を作り、そこにクリアファイルなどを挟むようになっているものが多いが、中松氏は「模倣したものが出てきているが重く、視界も確保しにくいだろう。『ドクター中松 スーパーメン SUPER M.E.N』は非常に軽くて、医師から長時間着けても疲れないという評判があります」と強調した。

 現在、生産ラインをどの程度、拡張するかなど、工場の建設は細部の調整をしている段階だ。中松氏は「自腹です。時間もかかるが、着実にやっていく」と決意を口にした。【村上幸将】