新型コロナウイルス対策の「出口戦略」をめぐる大阪府の吉村洋文知事(44)と西村康稔経済再生担当相(57)のバトルが7日、スピード決着した。

吉村知事は解除の独自基準「大阪モデル」を公表した際、出口戦略を国が示さないと非難。これに対し、西村氏は「仕組みを勘違いしており、強い違和感を感じる」と不快感を示していた。対立の背景には「国と地方」の役割分担の曖昧さがあったが、吉村知事は「明確になった」とし、大人の対応で早々と休戦した。

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吉村知事が国との大バトル発展を回避し、スピード決着させた。この日、吉村知事は府庁で記者団の質問に応じた。西村氏の「勘違い」発言に「決して勘違いしているわけではない」と軽くジャブを放ちながら「休業要請については知事の裁量・権限の範囲内だと明確に大臣にも言って頂いた。国と地方の役割分担がはっきりした」と冷静に話した。

吉村知事は、大型連休中もコロナ対策に奔走し、多数の全国ネットのテレビ出演をこなした。全国の首長の中でも日増しに存在感が増す中、6日に国とのバトルが発生した。火種は5日に公表した休業要請などを解除する独自基準「大阪モデル」にあった。

5日の会見では「本来は国が解除基準を示すべきだった」と対応を批判した。これにかみついたのが西村氏。6日の会見で「何か仕組みを勘違いしているのではないか。解除は知事の権限」と不快感を示し、自身のツイッターでも“口撃”した。吉村知事は6日深夜、自身のツイッターを更新。自らの「出口戦略」の主張は変えずに「今後は発信を気をつけます。ご迷惑おかけしました」と大人の対応を見せた。

バトルの背景には、国と地方との「権限」のあいまいさがある。特措法では、緊急事態宣言を発出するのは首相の権限だが、実際に自粛や休業要請をするのは都道府県知事となる。だが緊急事態宣言発令に伴って改定された「基本的対処方針」では、国は必要な場合は知事に「待った」をかけることができる。

吉村知事は「基本的対処方針」について「地方の権限と言いながら、基本的対処方針で実質的に縛っているというのが現実」と問題点を指摘。その上で「知事の出口戦略に国は口をはさまないということが明確になった。大阪の責任で進める」。西村氏の発言を逆手に取る、したたかさも見せた。15日にも「大阪モデル」で、解除を判断する。一方、安倍首相は緊急事態宣言の解除基準を14日をメドに発表する予定。国の基準によっては「吉村知事VS西村氏」のバトル再燃の可能性もある。【松浦隆司】