「マスクバブル」が終焉(しゅうえん)を迎えた。新型コロナウイルスの感染拡大で一時は超品薄から価格暴騰、高額転売や詐欺も横行したが、5月連休後に大幅な値崩れが始まった。

5日、東京都内の乱売スポットでは1箱(50枚入り)900円(税込み)と、1000円を割り込んだ。ネットではさらに価格破壊が進み、大量在庫を抱えた業者や小売店の個人による乱売が加速している。

   ◇   ◇   ◇

マスクが大量販売されている新宿区の新大久保通り周辺では価格破壊が進んでいた。通称イスラム通りには1箱(50枚入り)900円の使い捨てマスクが登場した。1枚18円。店頭にマスクの箱が山積みで、奥には天井近くまで積み上げられていた。中国製マスクで売れ行きを尋ねると「税込み。安い」と外国人店員が渋い表情で繰り返した。

コロナ禍前の使い捨てマスク相場はドラッグストアなどで1箱(50枚入り)が598円前後(税別)。税込みで1枚約13円だったが4月には1箱(50枚入り)5000円前後まで高騰。5月11日、新大久保通りの通称コリアンタウンの最安値は1箱(50枚入り)1963円(税別)。5日は同商品が1454円(税別)まで下落していた。

シャープなど国内生産のマスクが人気を集め、規格や品質の点などから輸入マスクの在庫はだぶついている。ついにネット上では1枚15・4円(税込み)のマスクも登場したが、販売単位は1万枚(50枚入り200箱)と在庫の山をうかがわせる。1箱(50枚入り)を2000円で並べている店では「売れない。この値段でも赤字」と店員はマスクの山にため息交じり。5月末には千代田区永田町の衆議院第二議員会館内の売店でも1箱(50枚入り)3000円前後で並べられていた。

マスクを訪問販売し、書類送検される事件も起こった。愛知県警は5日、名古屋市名東区のパート女性(64)を国民生活安定緊急措置法違反などの疑いで書類送検した。容疑者は3月31日ごろに名東区の女性会社員(68)宅で、8470円で購入したマスク(1箱50枚入り)を9350円で女性に販売した疑い。大量在庫をさばくために、店頭やネット以外の販売も出てきそうだ。アベノマスクの配布終了前にマスクバブルは終わりを告げ、バブル処理の混乱期を迎えそうだ。【大上悟】