自民党総裁選(14日投開票)は8日、告示された。党内7派閥中5派閥の支持を取り付けた菅義偉官房長官(71)が国会議員票(394票)の獲得状況で優位に立ち、地方での支持も固めつつあり優勢となる中、石破茂元幹事長(63)岸田文雄政調会長(63)のどちらが2位に食い込むかが、大きな関心を集めている。

2位にならなければ、政治的影響力も低下しかねず、石破、岸田両陣営の「2位争い」はヒートアップしている。

石破氏は今回、4度目の総裁選挑戦。今回、菅氏に続く支持を集められなければ、政治的な発言力がさらに低下し、来年の総裁選への出馬も危ぶまれる事態となりかねない。ただ国民的人気は今も高く、陣営は地方票(141票)の上積みに望みを託している。

一方、総裁選初挑戦の岸田氏は、安倍晋三首相からの「禅譲」をねらったが、自身の調整力や発信力不足もあって実現せず、戦略が大いに狂う形となった。

仮に菅氏には敗れても、2位に食い込めば、総裁選後も一定の政治的影響力を残せるとみられている。12年総裁選では、石破氏が安倍晋三首相に敗れたものの、多くの地方票を集めた経緯から、その後の党役員人事で幹事長に起用されるなど、「ノーサイド人事」の対象となった。

一方、菅、石破両氏に比べ、世論の支持が低い岸田氏については7日、森喜朗元首相が「安倍首相の本当の気持ちは岸田氏だ」「周りがだんだん菅氏への支持で納得する空気になったので、乗らざるを得なくなった」と発言。岸田氏陣営の選対本部長を務める遠藤利明元五輪相のパーティーでの発言だったが、森氏は、菅氏の支持を決めた細田派の出身で、今も派閥に強い影響力を持っている。

ある自民党関係者は「『安倍路線』に否定的な石破氏ではなく、岸田氏を2位にしなければという動きが出ている。無役の石破氏に比べ、岸田氏は現職の政調会長。2位争いに敗れれば、石破氏以上に負うダメージは大きい」と指摘する。石破氏、岸田氏ともに60代だが、今後は河野太郎防衛相(57)を筆頭に、次世代グループが総裁選の主要候補となる可能性が高く、3位になって影響力を失えば、世代交代の波にのまれかねないという現実もある。

石破氏が今回も2位となり今後に展望を残すのか、世論調査で石破氏に劣る岸田氏が巻き返すのか。「菅1強」の総裁選で、「2位争い」は熾烈(しれつ)を極めそうだ。