自民党の菅義偉新総裁(71)の後任となる官房長官に加藤勝信厚労相(64)が内定した。拉致問題担当も兼務する。16日に臨時国会が召集され、首相指名選挙を経て、菅首相が誕生し、注目の閣僚人事が明らかになる。自民党は15日、臨時総務会で二階俊博幹事長(81)、森山裕国会対策委員長(75)が続投するなどの党役員人事を発表し、総裁選で菅氏を支持した5派閥から起用される「派閥人事」となった。

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菅新総裁は7年8カ月ぶりの新首相を支える後継者に加藤厚労相を起用する。加藤氏は安倍晋三首相の側近中の側近で厚労相として、コロナ禍の医療対策を中心に対応してきた。歴代最長の安倍政権を支えたのは菅氏の存在だった。安倍首相が積極的な外交、安全保障を展開する一方で内政の要役を担った。

政権運営の重要な補佐役に安倍側近を起用することは菅氏が掲げる「安倍政治の継承」の座標軸にある。そして実直な実務派である菅氏からの高い評価とラブコールでもある。きょう発足する新内閣の閣僚人事で加藤官房長官が誕生すれば、新政権のひとつの方向性が示されることになる。

一方で、15日に正式発表された執行部人事は「派閥人事」そのもの。二階幹事長と、森山国対委員長が再任され、総務会長に佐藤勉元総務相、政務調査会長に下村博文元文科相、選対委員長に山口泰明元内閣府副大臣が就任した。総裁選でいち早く菅支持を表明した二階氏、森山氏(石原派)、下村氏(細田派)に菅氏と衆院当選同期の佐藤(麻生派)、山口氏(竹下派)と、主要ポストは総裁選で菅氏支持の5派閥から、きっちりと起用された。

派閥人事との批判に二階氏は「論功行賞なんてことは、つゆほども思っていません。それはマスコミの皆さんが、ずっと頭にすり込んでいる自民党に対する偏見ですよ。論功行賞なんてありません」と完全否定したが、語気鋭く、繰り返すほど、急所を突かれた感がにじんだ。

5派閥の支援で誕生した新内閣は宿命として派閥の意向やバランスを背負う。派閥人事が色濃い閣僚候補が浮上する中、「地方から出て来て地縁も血縁もない中でやってきた」という「たたき上げ」の新首相が、どんな流儀を打ち出すのか。【大上悟】