政令指定都市の大阪市を廃止して4特別区に再編する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が1日、投開票された。僅差で反対が賛成を上回り、大阪市の存続が決まった。

以下はジャーナリスト吉富有治氏の目

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大阪市を廃止して代わりに特別区を設置する、いわゆる大阪都構想の賛否を問う住民投票が1日に実施された。結果は反対多数。推進派の大阪維新の会はリベンジを果たせぬまま2度目の敗北を喫した。

松井一郎代表(大阪市長)は約束通り政界を去るだろう。維新も大きな政治目標とトップという求心力を失い、今後の勢力拡大に黄信号がともるだろう。橋下、松井の両氏に代わるニューリーダーの登場と、大阪市民を引きつける新たな政策がないと組織はジリ貧になる。

ただ、仮に賛成多数になっていても課題は残った。まず、25年には大阪・関西万博が控えている。大阪市は万博の準備に加え、自市の解体と特別区の設置という2大ハードルを越えねばならない。大阪市が抱える膨大な仕事量と重い負担を強いられる市職員が、特別区移行の事務をスムーズに行えるかが課題になったはず。

政令市廃止と特別区設置のためのコストが膨らむ可能性もあった。想定している初期コストは、住民票や戸籍などを扱うコンピューターシステムの改修、また各特別区庁舎の整備などで約200億円を想定。だが、新たなシステム作りに不具合が発生すればコストは膨らむ。東京五輪もそうだが、役所が計算する見積もりは甘いのが通り相場。特別区はできた、でも財政危機になったでは困る。

反対多数になったが、今後の大阪市をどうするのかという問題は山積だ。この解決には賛成派と反対派の垣根を越えた共同作業が必要。いがみ合うのはこれで最後にしてもらいたい。(ジャーナリスト)

 

◆吉富有治(よしとみ・ゆうじ)1957年(昭32)12月10日、愛媛県生まれ。石油会社などに勤務後、金融専門誌、写真週刊誌の記者を経てフリーに。週刊誌記者時代は経済事件などを担当。現在は地方自治、地方政治に中心に活動している。大阪府政、市政の取材は長く、維新の結党当初から取材。著書に「橋下徹 改革者か壊し屋か大阪都構想のゆくえ」「大阪破産からの再生」など多数。