米大統領選は、今日3日、投開票を迎える。全米平均支持率では民主党候補のバイデン前副大統領(77)に7・2ポイント差のリードを許すトランプ大統領(74)は選挙結果を左右する接戦州で猛追。「奇跡」を起こした16年大統領選の再現を狙う。前回、トランプ氏当選の可能性を示唆した国際政治学者三浦瑠麗氏(40)は今回、「トランプ氏が完敗しない限りグジャグジャ」と見ている。

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トランプ氏はラストサンデーの1日、カナダ国境に近いミシガン州から南部フロリダ州へと飛んだ。全米では7・2ポイント差あっても、勝敗を分けるのはフロリダ、ペンシルベニア、ミシガン、ノースカロライナ、アリゾナ、ウィスコンシンの接戦6州(選挙人計101人)。10月中旬の5ポイント差は1日、3・3ポイント差に縮まった。

ヒラリー・クリントン氏の圧倒的優位が伝えられた16年、「トランプ氏の可能性は捨てきれない。開けてびっくりの可能性はある」と言い続け、最後までトランプ氏当選の可能性を排除しなかった三浦氏は今回、「バイデン氏が前回のクリントン氏より有利であることは間違いない。トランプ氏は接戦州を1つも落とせない戦いだが、シンプルに負けるとは思えない」と見ている。

米大統領選は、過半数(270人)の選挙人獲得が確実になると、敗者は敗北宣言し、勝者をたたえるのが慣例だ。しかし、今回は「完敗したら敗北宣言せざるを得ないが、完敗しなければ訴訟に持ち込める。郵便投票の問題もあってグジャグジャになる」というのが三浦氏の見立てだ。「大阪都構想」の住民投票では、「反対多数確実」の速報が流れると、その段階では賛成票が上回っていたにもかかわらず、敗北会見が行われた。「投票行動は合法的に行われ、適正な手続きで終了したと思う日本とは違い、米国は負けた側が不正選挙だと言う社会になっている」(三浦氏)。

米国のニュースサイト「アクシオス」は、トランプ氏は投開票日の3日、接戦州でリードした場合、開票が十分に進んでいない段階でも勝利宣言すると側近に伝え、投票日の後に届いた票の集計は不正とする訴訟を準備していると報じた。トランプ氏は報道を否定したものの、投票日の後も集計が続くのは「ひどいことだ」と答えた。

新型コロナ感染を恐れ、今回の大統領選では9300万人が期日前投票を済ませ、うち5900万人は郵便投票と推計されている。接戦州ではノースカロライナが11月12日到着分まで、ペンシルベニアは11月6日到着分まで有効だ。郵便投票の利用者は共和党支持者の19%に対し、民主党支持者は42%。開票当初はトランプ票が上回り、郵便投票でバイデン票が伸びるとみられている。郵便投票で状況が変われば「不正」の声が飛び交う「グジャグジャ」の大統領選になる。【中嶋文明】

◆米大統領選の仕組み 

4年に1度、夏季五輪の年に1年間にわたって行われる。主に2つの段階がある。まず、共和党と民主党が約半年間かけて各州で予備選挙や党員集会を行い、それぞれの候補者を1人に絞る。本選挙は「11月最初の月曜の翌日の火曜日」に行われる。投票できる人は18歳以上の米国人。選挙は独特のシステムで行われ、全米で相手より多くの票を獲得しても、当選できないことがある。前回の16年は、民主党ヒラリー・クリントン氏が総得票数で共和党トランプ氏より300万票近くも多かったが負けた。