2011年3月の東日本大震災による津波で、当時小学6年生で12歳だった妹みずほさんを亡くした佐藤そのみさん(24)が製作した記録映画「あなたの瞳に話せたら」が6日、都内で開かれた東京ドキュメンタリー映画祭2020で上映された。

震災直後、宮城県石巻市には津波被害の恐ろしさの象徴として、多くのメディアが訪れた。悲しみに暮れるなか、遺族としての取材が相次ぎ、佐藤さんは報道のされ方や捉えられ方に疑問を感じていた。映画は、「被災経験者が伝えるべき」と、「遺族を傷つけることにならないか」という葛藤の中、今年3月まで通った日大芸術学部映画学科の卒業記念として手掛けられた。映画は、石巻市立大川小を舞台に「みずほは、もう21の年だろうか。あっという間だね」と妹に向けた手紙を朗読する場面から始まる。

「朝おはようと妹に言われ、無視してしまった」と、妹との最後の会話を今でも後悔しているという。「みずほに恥ずかしくない姉でいられているだろうか」と自問自答しながらも、批判を覚悟で「亡くなった人の人生を背負いすぎなくて良い」と、残された者がどうあるべきかという思いを映画に込めた。「みずほは、しばらく夢にも出てきてくれない。先生たちとも仲良くしているんでしょ。みずほはみずほでそっちで忙しいみたい」と前を向く。

佐藤さんは4月からテレビ制作会社の職に就き、仕事の都合で会場に来ることができなかったが「ご来場頂きありがとうございます。この作品が区切りです。震災から10年。私もようやく自分自身の人生と向き合うことになりそうです」とコメントを寄せた。

佐藤さんの母かつらさんが会場に訪れており「メディアなどに被災地を取り上げられることがありましたが、全ての思いを込めるのは難しい。その中でも全精力を注いでやってくれたと思います」と語った。