東京・池袋の都道で19年4月に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の第4回公判が19日、東京地裁で開かれた。この日は、飯塚被告の車の、衝突時の速度とブレーキランプの点灯について鑑定書を書いた、警視庁交通部の捜査員が検察側証人として出廷し、尋問が行われた。飯塚被告は起訴事実を否認している。

被害者参加制度を使って裁判に参加した、真菜さんの夫の松永拓也さん(34)と父の上原義教さん(63)は公判後、会見を開いた。その中で、刑事事件の第1回公判期日だった20年10月8日に、民事裁判の提訴をしていたと明らかにした。第1回の期日は2月9日に決まった。

松永さんの弁護人の上谷さくら弁護士は「(刑事事件の初公判)当日、罪状認否を争うと聞いてから提訴した。松永さんは刑事事件で詳細を明らかにして、民事はその後にしたいという意向があった。ただ、コロナの関係で裁判は進まない。証拠も不同意で裁判も長期化する。注目の裁判で法廷も大きく、公判期日も入りにくい」と状況を説明。その上で「いつになったら真実が明らかになるのか? いつになったら本人の口から話を聞けるか見通しが立たない。早く真実を聞きたい。相手が争うなら、真相を知るのに、やるべきではないかと」と、飯塚被告の口から一刻も早く真相を聞きたいという、松永さんの意向を実現することが民事裁判提訴の目的だと語った。原告は松永さんと上原さんと遺族数名で、被告は飯塚被告と自動車損害保険会社になるという。

松永さんは、警視庁交通部の捜査員が、防犯カメラやドライブレコーダーの映像解析から、飯塚被告の車の速度が縁石衝突時は69キロ、第1被害者の男性と衝突した際は84キロ、最後の衝突時は96キロだと鑑定したことを明らかにした。そして「映像解析の信頼性を突くために加害者側は尋問したと思いますが、加速したのは疑いのない事実だと思う。イベントデータレコーダーのデータは、アクセル全開でブレーキは踏んでいない記録が残っている。ブレーキランプはついていなかったという証言。加速を続けていた」とこれまでの公判から分かった客観的証拠を挙げた。

飯塚被告の弁護側は、20年12月14日の第3回公判で、同被告が事故が起きた都道に進行しようと交差点を左折した段階で、右足をブレーキペダルの上に置いて惰性で進んだが、踏んでも減速しなかったと説明。05年に購入した車の電気系統の経年劣化が事故の原因で、過失はないと主張した。松永さんは「加害者側は電子部品の経年劣化を主張しているが、あの日、あの時間に、たまたまイベントデータレコーダーの記録装置が不具合を起こし、ブレーキランプがつかなくなり、ブレーキも利かなくなり、さらに加速もしてしまう…こういった不具合が同時に起きたということでしょうか?」と首をかしげた。

そして「裁判が始まること自体、遅くて、コロナで裁判が進まない。何よりも早く何が起きたか、2人がなぜ亡くならなければならないか、加害者に聞きたい」と訴えた。