大逆風の中で菅首相は、緊急事態宣言の延長を決断せざるを得ない状況に追い込まれた。

冒頭で10都府県の宣言延長を発表した直後には、与野党の幹部が緊急事態宣言下の深夜にクラブで飲食、虚偽説明するなどの不祥事を陳謝した。「あってはならないことであります。素直におわびする次第です」と頭を下げた。この日は内閣委員会など審議に出席する度に前日から続く謝罪を繰り返した。

今回は1カ月の延長となるが感染拡大が減少し、医療体制のひっ迫が改善されれば、「期限を待たずに順次、解除すること」を菅首相は強調した。また、菅首相は「新規感染者数で言えば、東京で1日500人、大阪で1日300人を下回ること。さらに病床の急迫に改善が見られること」と解除の基準を示した。

だが、これまで同様に同席させた新型コロナ対策分科会の尾身茂会長に助け舟を求め、「すが(菅)る」ようなシーンを連発した。いつも通り、国民へのお願いを連呼した。その姿からは、痛々しさや弱々しさがぬぐえなかった。

東京五輪・パラリンピックの開催可否について菅首相は、お決まりの言及を避け、具体的に見込まなかった。「無観客の開催も選択肢」という森喜朗・大会組織委員会会長の意見に対しても言葉を濁した。

3月7日まで延長された解除期限の3日後の3月10日には、ギリシャ・アテネでIOC総会が開幕する。今夏の五輪開催のあり方についても具体的な議題となるとみられている。政府としては、感染拡大が収束せず、「再々延長」という最悪の事態に至ることは避けたいところ。1カ月の延長を選択した背景には、IOC総会までに感染者を大幅に減らし、ステージを下げたいとの思惑ものぞく。

きょう3日は暦の上で「立春」を迎えるが、政府与党内には春どころか冬本番の北風が吹き荒れている。【大上悟】