東日本大震災発災直後に誕生した瀬川虎君が、11日で10歳の誕生日を迎える。6日、父誠さん(46)、母史佳さん(48)とユアテックスタジアム仙台で行われた仙台-川崎F戦を観戦。試合前のセレモニーでは、犠牲となった人々に黙とうをささげた。

「サッカーで、傷ついた人々を勇気づけてもらいたい」。学校の授業で、自分の誕生日に大勢の人々が犠牲になったことを学んだ。今では「辛くて大変なときママは僕を生んでくれたんだね」と感謝の言葉を口にするまでに成長した。

出産から10年を経た史佳さんは今年、「人の役に立つ仕事をしたかった」と震災以来、封印していたアロマテラピストの仕事を再開した。「家族の心身のケアを保てるようにアロマの知識を広めていけたら」。今度はコロナ禍で広がる人々の健康不安を香りの力で癒やしていく。【下田雄一】

◆虎君の誕生 2011年3月11日午後2時46分、瀬川夫妻は仙台市内の産院の分娩(ぶんべん)控室で、震度6強の揺れに見舞われた。分娩室は医療機材が散乱。激しい余震も続き、安全確保のため病院のロビーに移動。停電のため暖房が止まり、冷たい外気が立ち込める中、分娩が始まった。午後3時23分、簡易ベッドで男児を出産。寅(とら)年に身ごもった男児は「強くたくましく生きてもらいたい」との願いから虎と命名された。震災当日、被災3県では、104人(岩手21人、宮城46人、福島37人)が誕生している。