東日本大震災から10年となった11日、岩手県沿岸部を走る三陸鉄道(本社・岩手県宮古市)が、「3・11を語り継ぐ 感謝のリレー列車」と題した震災復興ガイド付き列車を初めて運行した。

リアス線の盛(さかり)駅~久慈駅の全長163キロ。今月限りで定年退職するベテラン社員ら5人が10年間の経験談などを話しながら、4時間半の旅を続けた。震災だけでなく、2019年の台風被害も乗り越えた復興のシンボル「三鉄」。現在はコロナ禍にあるが、これからも地元住民の重要な足として愛される存在に変わりはない。

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募集後2日で完売した人気切符を手にした乗客にとっても貴重な経験だった。岡山県倉敷市から訪れた中山隼さん(30)は、3月11日が誕生日。「20歳になった日に東日本大震災が起きたので、複雑な思いでとらえています。原発の影響が大きかった福島には行ったことがあるけれど、岩手や三陸は初めて。写真ではなく、目や耳だと伝わるものも違う」。今年の誕生日も大きな財産を心に刻んだ。幼少期に経験した阪神・淡路大震災から復興した瀬戸内海の街並みと比べても「地震も大変ですが、津波は街ごと居住地をのみ込んでしまったんだと分かる」と大きく息を吐いた。

多くの知人を亡くした仙台市の50代女性も、三陸の被災地全域を見るのは初めてだった。「防潮堤の高さに驚いた。石巻より南の地域とは違う。生活する方たちも、海が見えたほうが良いのでは」と疑問を持ちつつ「人が来ないと発展しない。三鉄が観光の目玉になったら」と期待も寄せた。

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