菅義偉首相が29日、安倍晋三前首相と約45分間、会談した。4月8日に訪米し、バイデン大統領と首脳会談に臨む首相が、トランプ前大統領と強固な関係を築いた安倍氏と意見交換したというのが表向きの理由だが、政局勘にたけた安倍氏と、衆院解散・総選挙のタイミングを相談したとの見方も根強い。早期の解散か、任期満了近くの追い込まれ解散か、首相の解散戦略が問われている局面だけに、2人の意味深会談は臆測を呼んでいる。

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菅首相は29日、衆院議員会館の安倍氏の事務所を訪れ、約45分会談した。菅・安倍会談は、首相の就任直後の昨年10月以来。会談後、首相は報道陣に「先週、(21年度)予算が成立し、来月には訪米する。8年間にわたって政権を担った安倍前首相にお会いして、内政、外交について意見交換をした。非常に有意義だった」と述べた。

首相は4月8日から米ワシントンを訪れ、バイデン大統領と対面形式で会談する初の首脳となる見通し。トランプ前大統領と密な関係を築いた安倍氏に米側との関係構築などについて助言を求めるため、この節目での訪問になったようだ。

一方、「腹の中には別の目的があったのではないか」(与党関係者)との見方がある。秋までに行われる衆院解散・総選挙の時期で意見交換したかとの質問に、首相は答えなかった。

衆院解散・総選挙のタイミングをめぐっては、自民党内に4月末にも首相が解散に踏み切るのではないかとする「早期解散説」がある。一方、新型コロナウイルス感染再拡大で当面解散できず、任期満了前の「追い込まれ解散」になるとの見方も。首相が自身で衆院解散の時期を判断するのは初めてだ。幾度の国政選挙を乗り越えた安倍氏との会談だけに、さまざまな臆測が出るのも当然だ。

というのも、安倍氏は独特の政局勘で知られ、首相在任中の2度の衆院選も野党を下し、結果的に7年8カ月の長期政権を築いた。退任後の昨年11月、会合で「私だったら来年1月に解散する」と語ったとされ、波紋を広げたこともある。

自民党関係者はこの日の会談を「政局にたけた安倍氏と会談する姿を見せることが、首相には大事。与野党ともに緊張感が広がる」と分析したが、会談後、永田町ではさっそく「4月末解散→5月選挙」の見方が流れ始めた。首相の自民党総裁任期満了まで、30日で半年。会談は、首相の解散戦略を左右するだろうか。

 

▼今後の主な政治日程

▽4月8日 菅首相が訪米。9日にも日米首脳会談

▽同下旬? 高齢者のワクチン接種開始

▽4月25日 衆参2補選&参院広島再選挙投開票

▽6月16日 通常国会会期末

▽7月4日 東京都議選投開票

▽同23日 東京五輪開会式

▽8月24日 東京パラリンピック開会式

▽9月末 首相の自民党総裁任期満了

▽10月21日 衆院議員任期満了