日本医師会の中川俊男会長が19日の定例会見を異例の途中退席した。一連の騒動に対する批判や質疑応答を避けた可能性もあり、会見場は異様な空気に包まれた。

会見冒頭から、違和感があった。これまで中川会長は新型コロナウイルスの感染防止対策などについて「緊急事態宣言の発令をちゅうちょしている場合ではない」と警告するなど、強い要請を発し続けた。だが、この日は「かかりつけ医による個別接種の体制強化する」と発表した程度で、いつもの強いメッセージはない。わずか約2分40秒でマイクを譲り、16分ほどで退席した。

その後、会見は約1時間におよんだが、中川会長は戻らなかった。会見の終了間際になって、司会進行を務めた城守国斗常任理事は「会長は別の会合に出席した。記者会見の形式を、より正確な情報をお伝えできる形にさせていただいた。今後に関しては、この形式での記者会見を検討したい」などと釈明したが。唐突な方針転換に疑問はぬぐえない。

中川会長は、まん延防止等重点措置が適用されている都内で約100人が参加した自民党の自見英子参院議員の政治資金パーティーに、日本医師会の常勤役員14人全員と出席した。都内の日本医師会本部には、今も批判の電話が絶えない。中川会長は「慎重に判断すればよかった」などと先週12日の会見で謝罪したが、会長退任については「全くない」と否定した。今回、定例会見のやり方を突然変更し、十分な説明責任を果たさないまま会見場から退席したことに、新たな批判が再燃しそうだ。【大上悟】