東京都議選が25日、告示される。情勢は小池百合子知事(68)の動向で大きく左右されるとみられているが、ここまで小池氏は「都政を支えていく方々にエールを送りたい」と態度を明確にしておらず、22日、「過度の疲労」で緊急入院した。今、病床で何を考えているのか。「女帝 小池百合子」(文芸春秋)で23日、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したノンフィクション作家の石井妙子さんに聞いてみた。

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4年前、告示3週間前に都民ファーストの会の代表に就任し、55議席を獲得して第1党に躍進する一方、自民党を57議席から過去最低の23議席にまで大敗させた小池氏は今回、「都民ファを応援するのか」と聞かれても明言せず、東京五輪について都民ファが「最低でも無観客」と公約を発表しても「いろんな声があることは承知している」と答えるにとどめている。そんな中、告示3日前の入院となった。

石井さんは、ここまでの小池氏の言動について「自公との関係で『応援に行きます』とは言えない。都民ファーストは今回、結果的に見捨てられることになるが、『応援には行きません』と言えば非難される。答えたくなかったんだと思います。入院したことで、必然的に応援は難しいとメッセージが打ち出されたのではないかと思います」と話す。

都民ファは依然風任せで、前回、協力関係にあった公明党は今回、自民党と選挙協力する。選挙後の都議会運営を考えれば、自公との関係を保ちたい。入院で大義名分が立ち、責められることはなくなった。

コロナ禍と東京五輪という大きな政治課題に直面し、「小池さんは意見や方針を明確に打ち出せなくなった」とも分析する。コロナでは昨年までは「NO!!3密」のフリップを掲げ、「密です」と叫べば、流行語になった。今はフリップを掲げても喝采されることはなくなった。「やり方が通じなくなった。小池さんも何もやっていないんじゃないかと、浸透したのじゃないかと思います」。

開催都市のトップでありながら、五輪でここまで先頭に立つこともなかった。「コロナ禍でオリンピックをやる決定に積極的にかかわっていない、という形にしておきたいという心理があってのことかなと思います。存在を消している。橋下徹さんは『本当にうまいですよ。危ないときは身を引いて』と言っていましたが、何かをやればたたかれる状況です」。

「女帝 小池百合子」で小池氏の実像に追った石井さんのキーパーソンを見つめる目は厳しかった。【中嶋文明】

◆石井妙子(いしい・たえこ)1969年(昭44)、神奈川県茅ケ崎市生まれ。2006年、銀座の伝説的マダム・上羽秀を描いた「おそめ」で注目され、新潮ドキュメント賞、講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞各最終候補。16年、「原節子の真実」で新潮ドキュメント賞受賞。今年、「女帝 小池百合子」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。