東京オリンピック(五輪)・パラリンピック後に行われる見通しの総選挙の前哨戦であるにもかかわらず、「選挙の顔」となる菅義偉首相が都議選の応援に立っていない。

首相(自民党総裁)が1度も都議選の応援に入らないのは05年の小泉純一郎首相以来、16年ぶりになるが、05年は自民党が二分された郵政民営化法案審議で国会が延長されており、国会閉幕中にもかかわらず、街頭に立たないのは極めて異例だ。

菅首相は告示日の6月25日、党本部で行われた都議選対策本部出陣式であいさつした。しかし、その後は羽田での空港検疫の視察、森田健作前千葉県知事がパーソナリティーを務めるラジオ番組の収録、小学生5人が死傷した千葉県八街市の交通事故現場の視察のため、外出したほかは官邸にこもっている。

過去の都議選を見ると、01年は人気絶頂だった小泉氏が13カ所で街頭演説し、約10万人を集めた。09年の麻生太郎首相は“麻生降ろし”が広がる中での選挙となり、期間中、イタリアでサミットも行われたが、2カ所で街頭に立った。13年の安倍晋三首相も期間中に英国でサミットがあったが、帰国後、3日間で12カ所に応援に入っている。安倍氏は加計問題で「総理のご意向」と記された文書が文科省で見つかり、苦境にあった17年の都議選でも屋内3カ所で演説し、最終日にはJR秋葉原駅前で街頭に立っている。

自民党都連に「要請を控えているのか」と聞くと、「お願いはしている。官邸の判断」と話す。菅首相は4月の衆参補選・再選挙でも1度も応援に入っておらず、政治家なのに街頭演説が嫌いなのかと臆測を呼びそうだ。加藤勝信官房長官は「公務優先」と説明している。【中嶋文明】