過去最多の8人が立候補した横浜市長選の投開票が22日、行われ、立憲民主党が推薦する元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)が4選を目指した林文子氏(75)らを破り、初当選した。横浜がお膝元の菅義偉首相(72)が全面支援した前国家公安委員長の小此木八郎氏(56)は秒殺され、菅首相は「選挙の顔」として致命的なダメージを負った。9月末に任期満了を迎える自民党総裁選や、10月に任期満了となる衆院の解散・総選挙の行方に影響を与えるのは必至。

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秒殺だった。午後8時の投票終了とともにNHKから「山中氏当選確実」の速報テロップが流れ、小此木氏の事務所に集まった支援者は押し黙った。小此木氏は8時17分、「ごめんなさい。ありがとうございました」と頭を下げて現れ、「祈必勝 衆議院議員菅義偉」の為書きの脇で「今は感謝の言葉しかありません」と再び頭を下げた。

菅首相にはショートメールで連絡した。「ありがとうございました」と送信すると、「ご苦労さん」と返ってきたという。敗因を問われ「これから分析したい」と繰り返した。今後、いかなる選挙にも出ず、政界を引退すると明かした。

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致の是非が争点だった。IRを推進する菅内閣の閣僚でありながら「誘致取りやめ」を掲げて出馬した。36人いる自民党系市議は小此木支持派とIRを推進する林支持派に分裂し、菅氏の秘書出身の5人の市議も小此木氏支持3人、林氏支持2人と二分する事態になった。

故小此木彦三郎元通産相の秘書出身で小此木氏とは45年以上の交友がある菅首相は7月29日、小此木氏を「全面的かつ全力で応援する」と表明。しかし、IRを国家的プロジェクトとする菅首相が「取りやめ」を公約とする小此木氏を支援する分かりづらさ。小此木氏は「どうせ菅さんと結託して、当選してほとぼりがさめたら、やり直すんだろうと、疑念を持たれた。説明したが説明不足、力不足を感じた」と振り返った。

新規感染者の急拡大で、コロナ対策が争点化した。菅内閣のコロナ対策への批判票、不満票が「コロナ専門家」をうたう山中氏に取り込まれた。菅内閣の支持率は時事通信、朝日新聞、NHKの調査で30%を割り、危険水域にある。4月の衆参の補選、再選挙で3連敗、7月の都議選での惨敗に続く、地元横浜での秒殺。「選挙の顔足り得るか」と問う声がさらに高まりそうだ。【中嶋文明】