古くて新しい「お見合い」が新型コロナウイルスの感染が広がる社会で注目されている。築地本願寺(東京・中央区)が、出会いがなくて結婚を熱望する男女にお見合いをさせて仲を取り持つ「寺婚」ビジネスをスタートさせて1年が経過し、大好評を得ている。
昨年7月に発足。5日にはこの寺婚に登録した会員同士では1組目となる夫婦が誕生した。
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金色に輝く本堂に緋毛氈(ひもうせん)のバージンロードが敷かれ、その上を晴れやかな表情の新婦と、やや緊張した様子の新郎がゆっくりと歩いて入場してきた。重厚な旋律を奏でる寺院では珍しいパイプオルガンが2人の門出を祝福する。両家の親族約30人だけではなく、たまたま散歩や観光で訪れた一般拝観者も出席し、計100人ほどが参列した。たまたま同席した未婚の女性3人組は「お寺の結婚式ってすてき」「私も結婚したくなったわ」「まずは相手を探さないと」などと瞳を潤ませた。
新郎は福島賢一郎さん(44)で墨田区のハム製造「桑原ハム」専務で「従業員に『築地本願寺がお見合いしているんです、ってよ。専務もどうですか』と紹介されたのがきっかけです。築地本願寺が仲人なら安心感はあると思って」と笑顔をみせ「新型コロナウイルスで巣ごもり生活になったことも入会の大きな動機になりました」とも語った。
新婦は澤井菜津美さん(35)で「家族で浄土真宗の門徒。子どものころから慣れ親しんだお寺なので不安はありませんでした」とうなずいた。ともに昨年9月の入会で、手続きしたのが1日差という見えない運命の赤い糸はあったようだ。
築地本願寺の寺婚は出会いがなくて悩み、結婚を熱望する未婚の男女を対象とする。寺婚に入会すると、婚活事業で21年の実績を持ち、会員数日本最多を「日本結婚相談所連盟(IBJ)」と提携しているため、そのデータ閲覧を携帯電話でできて、気に入った相手を見つけたら築地本願寺を通じてIBJの会員とお見合いもできるシステムになっている。
寺婚は昨年7月のスタートから成婚数は14組と実績を残してきた。新婚の福島夫妻はともに寺婚同士では初のカップルとなる。2人とも相手を「おおらかな印象」と語り、声をそろえて「お寺でいいご縁をいただきました。幸せになります」と見つめ合っていた。【寺沢卓】
▼築地本願寺の寺婚 葬儀だけではなく人生の節目となる結婚について、当時反対意見が多い中、安永雄彦宗務長のトップダウンで2019年9月から取りかかったプロジェクトで昨年7月15日に始動した。
コースは3種。スタッフと個別面談後に入会。ライトコースは入会金7万7000円でお見合い申し込みは月15人まで。スタンダードコースは同16万5000円でお見合い申し込みは月30人までで、さらに月3人までスタッフからの紹介があり、年12回の結婚に関する悩みなどを相談できる面談もできる。プレミアムコースは入会金55万円でお見合い申し込み、紹介、面談は無制限。全コース月会費1万6500円で、成婚すると22万円の成婚料を納め退会する。金額はすべて消費税込み。
○…日本古来のお見合いは巣ごもりのコロナ禍で見直されてきているようだ。築地本願寺とも提携しているIBJでは19年12月までの会員数が6万4520人、20年12月で同6万7512人と増え、今年8月末で7万2918人と飛躍的に増えている。お見合い件数も着実に増加していて、昨年3月は3万5360件、夏枯れとも言われる今年7月には過去最多の4万6476件、8月も4万5366件と好調さをキープした。
IBJ営業推進部の杉山達哉部長(31)は「今まではネットで名前を伏せたデータを閲覧してもらい、気の合いそうな方と直接お会いしていただいていましたが、昨年からコロナ禍ということもあり、Zoomでお互いにお話しいただくネット型のお見合いをスタートさせた」と話し「これまでは隣接県ぐらいまでのお相手探しだったのが、今では日本全国でお探しになる傾向が出てきた。巣ごもりのコロナ禍の影響と思われます」と分析した。

