弁護士資格を持つ泉房穂参院議員は27日の参院予算委員会で、再審制度を見直す刑事訴訟法改正案をめぐり、検察の証拠開示の義務化と不服申し立て(抗告)の全面禁止を、高市早苗首相に繰り返し強く求めた。

「これ(再審制度見直し)は、与野党対決のテーマではない。罪なき者が犯人にされていいのかという正義の問題だ」とした上で、「自民党の高市さんに近い議員も(反対の)声をあげている。今の法務省案では冤罪(えんざい)被害者はすぐに救われない」として、「検察が持っている証拠をすぐに出せばいいし、(検察の)抗告を禁じれば(手続きは)早まる。難しい話ではない」として、意見が割れる中で、高市首相自身の決断が必要との認識を繰り返し示した。

泉氏は、袴田事件で再審無罪が確定するまでに58年かかったことなどを挙げ「どうして日本では冤罪(えんざい)があるのか」と高市首相に問いかけた。高市首相は「処罰されるべきではない者が処罰されることがあってはならないのは当然。万が一生じた場合、すみやかに救済されなければならない」とした上で、「再審制度を改正し、非常救済手続きとしてより適切に機能するよう、誤判からの速やかな救済をはかることと法的安定性を考慮しながら、さまざまな角度から検討する必要があると考えている。適切な制度改正が実現するように作業を進めていく」と応じた、「なぜ」の問いには「一概に総理として答えるのは差し控えるが、状況改善のために再審制度の見直しが必要。委員が指摘されたようなことはあってはならない」と述べた。

これに対し、泉氏は「あってはならないことがあることを前提にしてこの議論をしないといけない」と主張。「無罪につながる証拠は、捜査機関が持っていた証拠が出てきた結果だと理解している」として認識を問うたが、高市首相は「個別事件の裁判所の判断、検察当局の活動にかかわる事柄に内閣総理大臣として所感を述べるのは控えたい」と述べながら「再審が長期になった原因について、証拠開示、抗告のあり方など、今さまざまなご指摘があることは十分に承知している」と語った。

その上で、「(法制審議会で)さまざまな観点から丁寧に議論が行われた結果、答申に盛り込まれた制度となった。法制審の答申を受け止めつつ、与党内審査で議論を続けている。それを踏まえてできる限り早く(国会に)法案を提出できるよう進めたい」と訴えた。

泉氏は「証拠の開示の義務化」「検察の抗告の全面禁止」を求めたが、高市首相は「私がこうすべきと言って、みなさんが国会で賛成いただけるかといったら、そういう類いのものではない」として「政府としては答申も重く受け止めつつ、今の与党審査の議論も踏まえ、できる限りすみやかに法案を提出することができるよう準備を進めている」と繰り返した。

泉氏は「最終的には、総理が決断するしかないと思う」と訴えを続けたが、高市首相は「政府与党は一体となって、国民のみなさまに責任を持つ必要がある。だから内閣提出法案でも与党内審査を丁寧にしていただき、修正すべき点があればご提案いただき、それを受け止めている。私1人が決断をして、みんな従ってください、と。自民党はそういう政党ではありません。日本維新の会の連立政権でもそうです」とかわし、「十分に議論をいただき最適のものを提出し、その上で国会で議論いただきたい」と述べるにとどめた。

再審制度見直しに向けた改正案は現在、与党内で事前審査が行われているが、稲田朋美元防衛相ら自民党議員は、抗告の全面禁止などを求め猛反発。それを受けて法務省が示した修正案にも再び批判が相次ぎ、自民党内の会合では了承が見送られた。連休明けにも再び修正案が党側に示される見通しだが、双方が歩み寄れるかは不透明だ。

野党だけでなく、自民党内にも異論がある状況で、高市首相の「最終決断」を求める泉氏の指摘には、野党側から拍手も起きたが、高市首相は「再審制度の改正は刑事訴訟法の改正にかかわり、刑事裁判実務に非常に大きな影響を及ぼす。与党や超党派議連のご意見も承知している。そういうものを併せて検討しているが、法制審議会もさまざまな立場の方に入っていただき、一生懸命議論を重ねてくださった。全部が一枚岩ではなかった」とした上で、「答申を政府としては重く受け止め、与党内の指摘を踏まえて法案提出できるよう努力している最中だ。私自身の決断で決めていいことではない」と強調した。

泉氏は、今国会での法案成立は現状では「困難」との認識を表明。法案成立を目指すのか、見送るのか、高市首相の認識を問うた。高市首相は「もちろん今国会に提出し、成立を目指している。立ち位置は変わっていない」とした上で、「しかしながら、原案のまま出して、委員会や本会議で投票行動がばらばらになると、与党も国民に対して責任が持った行動ができない。人の命や人生がかかった、本当に重い重い問題だ」と主張。「再審制度見直しは私自身、総裁選の公約だった。だから1歩でも2歩でも前に進めないといけない、と、強い思いで取り組んできた。しかし意見が割れている中で、私単独で、『これに従ってください』と、たとえ与党に対してでも申し上げることはできない。知恵を集めてよりよいものにして、みなさまの納得できるものになればよいと思っている」と理解を求めた。