自民党総裁選(17日告示、29日投開票)に出馬を表明している河野太郎行革相は告示日前日から逆風に見舞われた。16日午前に派閥を横断して河野氏を支持する議員会合に出席し、小泉進次郎環境相から「派閥の力学でできた政権が、難しい課題を国民の理解と共感の下に進められるとは思えない」と熱いエールを送られた。そして、午後1時30分から都内のホテルで派閥を横断して河野氏を支持グループの設立総会を開き、石破茂元幹事長、小泉氏が初めてそろい踏みして結束をアピールするシナリオだった。

しかし、正午から所属する第2勢力麻生派(53人)の会合が設定され、河野氏は「決起集会」への欠席を余儀なくされた。設立総会にはビデオメッセージが届けられただけ。総裁選へ向けた最高の演出のはずが、身内に出ばなをくじかれた格好だ。

さらに、出席した麻生派の会合では、これまで通り全面支持は得られず、自主投票が決定した。派内には甘利明税調会長ら一部から河野氏に対する根強い反発があり、岸田文雄前政調会長を支持する動きが顕在化し、名ばかりの自主投票となる可能性が出てきた。

さらに野田聖子幹事長代行が出馬を表明し、4氏による選挙が確実となった。乱立によって票が分散する可能性は高く、決選投票にもつれれば、河野氏の不利も予測される。野田氏出馬の報に「野田さん、出るんだ」と驚きは示さなかった。報道陣から「派閥の動きがあったのでは」との問いに「そうでしょうね」と淡々と応じた。派閥を横断して河野支持に回った中堅議員は「乱立で流れは変わる」と、情勢の急変を危惧した。

河野氏は持論の「脱原発」を大きくトーンダウンさせ、「森友学園を巡る問題」、「政治とカネの問題」など安倍晋三前首相や党幹部のアキレス腱(けん)となりかねない「負の遺産」を封印するかの発言を続けており、配慮を伺わせる。

それでも安倍氏は警戒を強め、政治信条が近いとされる高市早苗前総務相を支援する。この日、岸田氏は安倍氏の出身で最大派閥の細田派(96人)の細田博之会長と国会内で会談し、支援を要請した。細田派の動き次第で他派閥も同調する可能性もある。いよいよ、先の読めない乱立の公示を迎える。【大上悟】