岸田文雄首相就任から27日後の今月31日に投開票される第49回衆院選は、19日に公示される。日刊スポーツでは最新情勢を、ジャーナリスト鈴木哲夫氏(63)に分析してもらった。首相は与党で過半数の「233議席」という低めの勝敗ラインをあげたが、野党共闘も整い、拮抗(きっこう)する選挙区も多い。情勢次第で自民党が単独過半数を割り込むケースも想定されるという。今後、情勢は変化する可能性があるが、決戦の審判は有権者が下す。

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短期決戦は新人や統一候補を進めようと準備していた野党にとっては痛い。一方で、政権与党や現職に優位とされる。だから岸田新首相は早期解散を打った。しかし、逆もある。何か起きたら一気に流れができてしまい今度はそれを修復する時間がない。今回の総選挙はじつは後者の緊張感が出てきている。

自民党が公示直前に行った情勢調査は思いのほか厳しかった。全体では約20議席減に加えて、小選挙区で拮抗(きっこう)しているところが約20、さらに誤差内でひっくり返される可能性のあるところが20。幹部らの失言やスキャンダル1つで流れが変わる下地がある。自民党選対幹部は「失点を防ぐ。保守分裂の選挙区などそのままやってたらまずい」と幹部のメディア露出を控えたり候補者調整に動きだしたほどだ。

マスコミ各社の世論調査による内閣支持も「分からない」が30%もある。ドラスチックな結果も十分あり得る。勝敗ラインについて岸田首相は自公で過半数と言うが、私は自民党で単独過半数を取れるかだと思う。過半数なければ法案一つ通せない。ますます連立の公明党の影響力が強まる。

そもそも岸田政権は発足時から安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁の影響が色濃く、岸田氏が総裁選で胸を張った経済政策なども総選挙に入り後退発言が目立つ。岸田カラーに暗雲が垂れ込めてきたところへさらに公明党の影響力も加わるようなことになれば、政権の迷走や新たな権力闘争につながる。自民党の単独過半数は大きなポイントだ。(ジャーナリスト)

◆鈴木哲夫(すずき・てつお)1958年(昭33)7月18日、福岡県生まれ。早大卒。テレビ西日本、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを歴任。豊富な政治家人脈で永田町の舞台裏を描き、多くの放送局でコメンテーターを務める。近著に「石破茂の頭の中」「くまモン知事」(いずれもブックマン社)。