忘新年会シーズンを前に、新型コロナウイルス禍と土石流災害の風評被害でダメージを受けた熱海の芸妓(げいぎ)を後押ししようと、静岡県熱海市が、芸妓を入れた宴会アピールに取り組んでいる。コロナ禍だけではなく、7月3日に伊豆山地区を襲った土石流災害への心配から宴会需要自体が激減。市観光経済課では「いまだに熱海市全体が流されたと思っている電話もくる。芸妓の活動を通して熱海が元気であることを伝えたい」としている。

熱海の芸妓は伝統的な芸を代々受け継いできており、行政や市商工会議所も、文化として振興している。15日から来年3月まで、熱海市、市商工会などが芸妓を宴席に呼んだ利用客に30分ごとに1000円を助成する制度を始める。

芸妓1人にかかる料金は30分を「1本」と数えて、1つの宴会では「4本=2時間」から受ける。熱海芸妓置屋連合組合加盟の芸妓の場合、1本は一律5500円。助成金を使えば、2時間2万2000円が1万8000円と4000円引きの割安になる。

夜のお座敷とは別に、土曜、日曜の日中に披露している芸妓の踊り見学も復活。稽古場「熱海芸妓見番(けんばん)歌舞練場」(熱海市中央町)で芸妓があでやかな踊りを披露する「華の舞」が6日に4カ月ぶりに上演され、満員札止めとなり大盛況だった。

「華の舞」は20年前から芸妓のアピールの一環として開催されてきた。「黒田節」「茶切り節」など伝統の踊りや今風の新作の踊りなど8演目の和風ミュージカル的な舞台を、お茶付きで1800円で鑑賞できる。定員の100人の半分の50席で開催し、ステージと客席の間にアクリル板を設置するなどコロナ対策も張り巡らす。

コロナ禍で芸妓の需要が激減したが7月ごろに時短営業ながら芸妓の宴席の予約が入り始めていた。しかし、7月3日に土石流が発生してすべての予約がなくなった。9月末に緊急事態宣言が解除され、10月になってようやく回復の兆しが見え始めた。

熱海芸妓置屋連合組合で芸妓をしながら広報部長も兼任する豆一(まめかず)さんは「ほとんどの芸妓が派遣の事務職など昼間の仕事でなんとか食いつないできた」と話し「これから張り切って宴席を盛り上げていきますよ」と力こぶを作って見せた。【寺沢卓】

○…6日の「華の舞」の新作「まめっこ音頭」で熱海芸妓置屋連合組合の公式キャラクター「熱海まめっこ」がデビューした。昨年11月、おでこの広い日本髪の芸妓のイラストを公開し、名称募集をしたところ、全国から500点以上の応募があった。長崎県の石島拓哉さん発案の「おちゃめで豆粒のように小っちゃくてかわいく、まめまめしく動きながら周りの人を楽しませてくれる」との命名理由で決定。7日は熱海の先輩キャラで、熱海温泉ホテル旅館共同組合の公式キャラクター「あつおくん」がサプライズゲストとして訪れ、ステージ上でコラボ共演した。