プロ野球「SMBC日本シリーズ2021」第6戦を制したヤクルトが、20年ぶりに日本一を決めた27日、本拠地の神宮球場(東京都新宿区)から徒歩4分の場所にある「ヤクルト推し 居酒屋 和’s(わず)」には、神戸に行けなかったファンが集結し、歓喜を爆発させた。

30席ほどの店内は予約で満席。ファンはテレビに向かって延長12回、午後11時過ぎまで熱い視線を送り続けた。優勝を決めた瞬間は、総出で立ち上がり、喜びを分かち合った。店員の大竹咲来さん(20)は「本当にうれしいです」と涙を流して喜んだ。

和’sは14年から開業し7年目。熊本県直送の馬刺しが売りだ。ファンの間では「いつでも迎えてくれる家のような場所」と親しまれるが、ヤクルトカラーに染まったのは、コロナ禍の影響を受けた20年4月ごろから。時短営業や酒類の提供停止などで、売り上げが従来の4分の1にまで落ち込んだ。それでも変わらずに来店し続けた常連のファンが“ヤクルト推し”の店を提案。神宮球場近くにファンが集まる飲食店がないこともあり、この提案に乗ることを決めた。店内にある選手のサインやタオル、約50着のユニホームはファンが持ち寄ったものだ。

和’sでは、優勝を記念して割引チケットを配布する「感謝祭」を行う予定。元ヤクルトで現巨人広岡大志の実家の精肉店から取り寄せる、コロッケのクーポン券の配布も考えているという。奇しくもコロナ禍をきっかけにリニューアルした店は、最下位から日本一に輝いたチームと歩調を合わせるよう、ファンとともに最高潮の瞬間を迎えた。【沢田直人】