囲碁界歴代5位のタイトル通算48期を獲得した大竹英雄名誉碁聖(79)が15日付で引退届を出し、東京「日本棋院」で同日、記者会見を行った。

現役を退く意向を固めたのは1カ月ほど前。「頭の中に浮かぶ(囲碁の)図が貧相になってきた。今の状態じゃ、80になる前に失礼した方がいいかなと思いました」と、理由を説明した。

大竹名誉碁聖は1942年(昭17)5月12日、福岡県北九州市生まれ。51年に故木谷実九段の弟子となり、56年プロ(初段)としてデビューした。厚みを生かした打ち回しで碁聖戦6連覇をはじめ、名人4期、十段5期獲得など、タイトル戦でも活躍した。同じ42年5月生まれの林海峰(りん・かいほう)名誉天元と「竹林(チクリン)時代」を築いた。08年12月から12年6月までは日本棋院理事長も務めた。

「林先生には引退を届け出る前にひと言謝りたくて電話をしたが、あいにくつながらなかった。自分の手が切られるほど痛い」と悔やんだ。

また、木谷門下の塾頭格として、同門の後輩である故加藤正夫名誉王座、二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段=73)、武宮正樹九段(70)、小林光一名誉棋聖(69)、趙治勲名誉名人(65)、故小川誠子七段らを指導した。中にはタイトル戦で頂上対決をした弟弟子もいた。「みんな頑張ってと思いながらも、囲碁に対してだけはへこたれなかった。勝ち負けはあまりこだわらなかった」と振り返った。通算成績は1319勝(史上4位)846敗。

日本棋院の未来については、「トーナメント棋士だけではなく解説や聞き手、書き手、教えるのが上手な人など、ありとあらゆるトップ棋士が必要。国際棋戦で頑張るだけではなく、ファンともっと交流できる人がいてもいい」と思い描いている。

自らは引退後、「水戸黄門役をやってみたい」と話した。「助さん格さん、お銀の役(の棋士)を連れて、全国を行脚したい。地域の皆様との交流をしながら、囲碁の楽しさを広めたい」と笑顔で語っていた。