17日午前10時20分ごろ、大阪市北区の8階建ての堂島北ビルで「4階が燃えている」と119番があった。大阪市消防局によると、男性17人女性11人の計28人が負傷し、いずれも4階から救出された27人が心肺停止。捜査関係者によると、19人の死亡が確認された。消防車75台が消火活動にあたり、午前10時45分ごろ、火はほぼ消し止められた。

捜査関係者によると、出火元とみられる4階のクリニックを訪れた60代くらいの男が受付近くに紙袋を置き、袋から流れ出た液体付近から出火したとの目撃情報がある。大阪府警は放火の疑いがあるとみて調べている。

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出火元とみられる4階部分に入るクリニック「西梅田こころとからだのクリニック」は、精神科や心療内科の診療が専門で、働く人のうつ病やパニック障害などをサポートすると掲げている。4年前からクリニックに通う大阪市内の会社員の50代男性は「苦しい気持ちを持っている人のために寄り添ってくれる心優しい院長。初診のとき、僕みたいに昼間に仕事がある人のためにも夜間診療もすると聞いた」と話した。

同クリニックは15年秋ごろに開院。勤務する医師は、精神保健指定医や日本医師会認定の産業医の資格がある院長のみで、看護師や臨床心理士ら複数のスタッフが勤めていた。

この日午前は、休職した人らの職場復帰をサポートする集団治療を行う「リワークプログラム」が予定されていた。50代男性は「金曜日の午前中はリワークプログラムの日と決まっていて、多くの人が来る日だった」と話した。

院長の親族男性(77)は「特にトラブルの話は聞かなかった」。クリニックに通院している大阪市の女性(28)は「話をよく聞いてくれ、すごく信頼できる先生です」と困惑の表情を見せた。【松浦隆司】