新型コロナウイルス新変異株「オミクロン株」の感染が全国で拡大する中、「第1回全国高校書道パフォーマンスグランプリ」が23日、千葉・イオンモール幕張新都心で行われ、仙台育英(東北北海道代表・宮城)が初代王者に輝いた。主催者は直前まで検討を重ねた結果、感染防止対策を念入りにしての実施を決断。コロナと共存した社会活動継続に感謝する声があがる一方、各地区予選を勝ち抜いた出場15校中、1校は辞退、1校は映像で参加するなど、自粛決断の対応もあった。準優勝に水戸葵陵(関東代表・茨城)、3位は松本蟻ケ崎(中部代表・長野)が受賞した。

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演技の最後に糸を紡いで、1本の固い絆を作った。「紡ぐ」をテーマに頂点を引き寄せた仙台育英の佐藤ななかパフォーマンス部長(2年)は「信じられない。コロナもあったし、練習がみんなで出来なかったりして、それぞれバラバラになりそうだったけれど、パフォーマンスを通じて1つの太い糸になれたと思う」。仲間と大粒の涙を流し、抱き合った。

コロナ感染防止対策のため、演技中もマスク。激しい動きゆえに苦しかった。仙台育英は公共交通機関を使わず、専用バスで約5時間。本来は会場近くに宿泊予定だったが、人流の多い都心部を避けるため千葉最東の銚子市を選んだ。佐藤部長は「正直、コロナを宮城に持って帰ってしまったらと不安だったけれど、親などは応援してくれたので優勝を持って帰ることができて良かった」。渡辺章紀監督も「よく『支えてくれた人に感謝』と言うけれど、今回は本当に助けていただいた。主催者も学校も保護者の方も苦しかったのに協力してくださった」と感無量の表情だった。

主催したイオンモール担当者も「オミクロンの拡大で開催は非常に迷った。各校の意見も伺いながら、リアル開催するにはどうしたらよいかを考える決断をしました」と苦悩の選択を明かした。会場となったイオンモールでは買い物客ら観衆にも係員が社会的距離などの徹底を呼びかけた。反対意見もあったが、コロナ禍と共存しながら社会活動を止めない試行錯誤の形でもあった。

選手からは「こういう場を設けていただき、ありがとうございました」のあいさつが相次いだが、神辺旭(中四国代表・広島)は部員18人中5人が出場を自粛し、13人での出場を21日に決断した。朝日観月主将(2年)は「5人の思いも背負いました」と悔し涙を流し、「夏の甲子園(全国大会)は18人で出場したい」。一方、出場校の関係者の中には「正直、いつ中止や延期の決断をしてくれるのか待っていた。地方から関東に来る学校、感染の大小、不公平な感じは出てしまう」との声もあった。【鎌田直秀】

◆全国高校書道パフォーマンスグランプリ 2015年(平27)にイオンモールとイオンリテールが主催した「高校書道パフォーマンスグランプリ」が前身。中国、四国地方を中心とした地域限定の大会で、1度目は28校だった出場校が、19年には44校へ。今回、イオン社の高校生への大規模大会提供への思いや、商業施設の顧客サービスとして、冬開催の全国大会を発足。全国8地区46校が予選に参加。08年に開始され、夏に開催される「全国高校書道パフォーマンス甲子園」は今年度(昨年7月開催)で第14回。今大会では書道パフォーマンス甲子園実行委員会が後援に。いずれも、4メートル×6メートル四方の巨大な紙の上を、音楽に合わせて手拍子やダンスをしながら書道を行い、書道とパフォーマンス両面で競う。イオン社は春と夏に全国大会を開催する高校野球のように夏冬2大大会の定着を期待。