ロシア外務省は21日、北方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉を中断すると発表した。4島でのビザなし交流と元島民の自由訪問の停止、共同経済活動からの撤退を表明。ウクライナ侵攻に伴う日本による制裁に反発した。

これを受け、岸田文雄首相は22日の参院予算委員会で、「すべて今回の事態はロシアによるウクライナ侵略に起因している。にもかかわらず、それを日ロ関係に転嫁しようという対応は不当であり、受け入れることができない」と厳しく抗議した。日本維新の会・鈴木宗男氏から「いつ、どのレベルで日本に通告があったのか」との質疑に外務省の宇山秀樹欧州局長は「ロシア側から事前の通告はなかった」と明らかにした。

日本が米国など先進7カ国(G7)諸国と歩調を合わせた対ロ経済制裁に強く反発したもので、ロシア外務省は21日、「このような条件下で平和条約交渉を続けるつもりはない。露骨に非友好的態度を取る国と重要文書署名を討議することは不可能だ」とした。そして「両国関係に及ぼす損失の責任は、すべて反露的路線を選んだ日本側にある」と非難した。これによって北方領土へのビザなし交流や元島民による自由訪問は停止され、共同経済活動も撤退を余儀なくされる。

この日、参院本会議で2022年度予算が可決した。一般会計総額は107兆5964億円と、10年連続で過去最大となったが、ロシアへの経済協力を含む事業に約21億円が盛り込まれている。立憲民主党の福山哲郎氏から「21億円の経済協力は、この予算から外さないのか」と追及された岸田首相は「(21億円の)中身は参加した日本企業を支える予算が含まれている。今後、ウクライナを巡る情勢は極めて不透明であり、この予算に対して修正することは考えていない」などと、これまでの主張を繰り返した。

平和条約交渉からの離脱を一方的に宣告したロシアに対して経済制裁を継続する一方で、経済協力する予算が通過した。経済制裁と経済協力の同時進行は、矛盾にも映る。日ロの関係が今、大きな岐路に立たされている。【大上悟】