北朝鮮の朝鮮労働党は15日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け政治局非常協議会を開催し、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、住民に医薬品が十分に供給されていないとして内閣を批判した。

15日夕までの1日で発熱患者約39万2900人が新たに確認され、8人が死亡。4月末からの2週間余りで累計の発熱患者数は、総人口約2588万人の4.7%に当たる121万3000人超に達し、死者は計50人になった。北朝鮮メディアが16日報じた。金正恩氏は首都平壌での医薬品安定供給へ朝鮮人民軍の軍医部門動員を決め、党中央軍事委員会の特別命令を出した。

1日当たりの新規発熱患者数は前日より9万人以上増加。感染が加速しており、発熱患者総数は16日にも人口の5%を超える可能性がある。北朝鮮はワクチン供給の国際枠組み「COVAX(コバックス)」の支援も実現しておらず、一般市民のワクチン接種者はほぼゼロとみられる。感染を調べる検査キットも治療薬もほとんどない。韓国メディアは、北朝鮮が中国へ物資支援を要請したと報じており、中国から医薬品を調達する動きを本格化させた可能性がある。

金正恩氏は協議会で、医薬品が住民に「適時に正確に届いていない」と述べ、内閣と保健部門は無責任な態度だと非難。協議会後には平壌市内の複数の薬局を訪問。販売員らに衛生服が行き渡っておらず、薬品も少ないなどとして「薬局が機能を円満に遂行できていない」と指摘した。

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は16日の施政方針演説で、北朝鮮側が受け入れるなら支援を惜しまないと表明した。ただ韓国政府によると、実務接触に向けた通知文を送ろうとしたが、北朝鮮は受け取る意思を示していないという。