山口県の阿武町(あぶちょう)が、誤って4630万円を町民に振り込み、返還を求めて提訴した問題で、山口県警は18日、誤給付金と知りながら移し替え不法に利益を得たとして電子計算機使用詐欺の疑いで、同町の無職、田口翔容疑者(24)を逮捕した。県警によると、容疑を認めているという。

前代未聞の騒動の、これまでの主な経緯をまとめた。

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▼4月1日 阿武町が、臨時特別給付金の対象の463世帯の振込先を記録したフロッピーディスクを銀行に提出し正規の手続き

▼6日 職員が、名簿の一番上にあった田口容疑者の名前と4630万円の金額が記載された振込依頼書を、誤って銀行に提出

▼8日 銀行が、田口容疑者を含む463世帯に10万円ずつ振り込み、残高665円だった田口容疑者の口座には別に4630万円も振り込んだ。振り込み後の同日午前、銀行から確認があり、町が誤りを把握。すぐに田口容疑者宅を訪問し、謝罪し返還を求めた。田口容疑者は返還の手続きに同意し、職員とともに公用車で宇部市内の取引銀行の支店に移動したが、玄関前で「やはり今日は手続きしない。後日、公文書を郵送してくれ」と一転拒否。帰宅途中で、車から降りた。この日にデビット決済で67万8967円を出金

▼10日 田口容疑者から町に「弁護士と相談する」との電話連絡。この日から連日、多額の出金を繰り返し、11日には8回出金し計約900万円を超えた。12日には1回当たりの最高額400万円を出金し、これが逮捕容疑となった。主な振込先は3つの会社で、決済代行会社とみられる

▼14日 町が母親にも説得を依頼。田口容疑者の勤務先の萩市内のホームセンターで母親とともに面会したが、田口容疑者は役場の非を述べ、弁護士と話すと主張したという。弁護士に相談の連絡

▼15日 町が公金誤振込に関する会見を開催。町長がお詫びと経過説明

▼18日(19日付) この日までに計34回にわたり、振込手数料も含め4633万1922円を出金。その時点で残高は6万8743円

▼21日 連絡がなかったため、町は自宅を再三訪問。会えたが、田口容疑者は返還を拒否。「お金はすでに動かした」「もう元には戻せない」「罪は償います」などと話し、使途などについても説明を拒んだという。このころ仕事を辞め、以後、自宅も不在に。また、4月と5月の2回、県警に出頭して任意聴取を受け、スマートフォンを任意で提出

▼22日 町が公金の返還拒否に関する会見を開催。町長がお詫びと経過説明。町はこの後、関係先銀行の調査などを続けた

▼5月12日 町が田口容疑者を相手取り、全額と弁護士費用など含め約5116万円の支払いを求めて山口地裁萩支部に提訴

▼13日 田口容疑者と弁護士が面会し正式に代理人に

▼16日 代理人が会見し「返還が難しい状態」「何か財産的価値のあるものが手元に残っている状態ではないと聞いている」「スマホの操作で送金したと聞いている」などと説明

▼17日 田口容疑者が「金は海外の複数のインターネットカジノで全部使った」などと説明していることが判明。また同夜、代理人と連絡を取った際に「お金を使ってしまったことは大変申し訳なく思っています。少しずつでも返していきたい」と話していたという

▼18日 田口容疑者の口座の金の動きが判明。県警が山口市内で任意同行を求め、午後8時43分に逮捕