ジャーナリストの伊藤詩織さん(33)が20日、都内で会見を開いた。元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(56)から性的暴行を受けたとして、1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は7日、双方の上告を退ける決定をし、山口氏に約332万円の賠償を命じていた。今回の会見は、被害に遭ってから7年、裁判を起こして5年を振り返るという趣旨で開かれた。

伊藤さんは米国の大学に在籍した13年12月に、アルバイト先のバーで山口氏と知り合い、正社員としての就職先を求めるメールを送信したことをきっかけに、帰国した15年4月3日に山口氏と会食した際、意識を失い、ホテルで暴行を受けたと主張。準強姦(ごうかん)容疑で警視庁に被害届を提出。同6月には山口氏の逮捕状が発行されたが、逮捕直前に取り消されたという。一方、山口氏は合意に基づく性行為だと反論し、東京地検は16年7月、嫌疑不十分で不起訴とした。伊藤さんは翌17年5月に不起訴不当を訴えたが、東京第6検察審査会も同9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして不起訴相当と議決。それを受けて、伊藤さんは同年9月に山口氏を相手に民事裁判を起こした。

伊藤さんは「5年間、戦ってきた民事裁判に区切りがつきました。被害を受けてから7年…昨日はなかなか眠れず、今日も朝5時に起きて、お散歩して考えた」と現在の率直な心境を語った。17年10月には著書「Black Box」を出版し、都内で会見を開いたが「公で性被害を話すのは家族から反対され、周囲とは溝も出来た」と、涙声になりながら振り返った。

最高裁は、山口氏に約332万円の賠償を命じた一方、伊藤さんの17年の著書「Black Box」などでデートレイプドラッグを使われた可能性があるとされたことで名誉を傷つけられたとして、1億3000万円の損害賠償を求めた山口氏の反訴について、真実性が認められず名誉毀損(きそん)に当たると判断し、伊藤さんにも55万円の支払いを命じた、2審の東京高裁判決が8日までに確定していた。伊藤さんは「今回の最高裁の決断は、1つの決断ですが、今の社会であったり、進むべき方向を示しているものではないと個人的に思っています」と受け止めを語った。