羽生善治九段(52)と藤井聡太王将(20)とのタイトル戦が実現した。将棋の第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ戦が22日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた。7人総当たり戦で5戦全勝だった羽生は、4勝1敗で追う豊島将之九段(32)との直接対決を制した。6戦全勝として、藤井王将への挑戦権を獲得した。羽生の王将戦登場は、第65期以来7期ぶり19回目。タイトル戦登場は2年前の竜王戦以来となる。注目の7番勝負第1局は来年1月8、9日、静岡県掛川市「掛川城二の丸茶室」で行われる。

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羽生が勝利をもぎ取った。後手豊島の失着につけ込んだ。「悪いはずはない」と、奪ったリードをしっかり広げ、押し切った。

想定外のリーグ全勝での挑戦権獲得。「ずっとチャンスらしいチャンスもなかったですが、今回はそれが生かせて良かった」。一昨年竜王戦以来のタイトル戦登場の喜びをかみしめた。

豊島とはここまで19勝26敗。2018年(平30)の棋聖戦5番勝負では2勝3敗でタイトルを失い、2年前の竜王戦でも豊島に1勝4敗で挑戦を退けられた。今回は「負けてもプレーオフとは考えず、1局に集中してやろう」との思いで、直接対決を制した。

王将戦では、故大山康晴15世名人が第29期で達成した56歳での挑戦に続く年長記録。全体でも4位にあたる、52歳3カ月での挑戦権獲得だ。

昨年度は14勝24敗と、初めて負け越した。名人9期も含め、29年連続で在籍した順位戦最上級のA級からも陥落した。今期は棋王戦でも挑戦権争いに絡んでいる。「ソフトの定跡やセオリーがかなり大きな影響を持っている。その深い研究に離されないでついていけたら。伸びしろはまだあると思って頑張っている」と言う。その成果がV字回復につながったのだろう。

現在タイトル獲得通算99期(竜王7、名人9、王位18、王座24、棋王13、王将12、棋聖16)。100期目獲得を目指す相手は、「ずっと実現できたらと思っていた」というタイトル戦10戦負けなしの5冠王だ。

4年前の2月、朝日杯で15歳6カ月の史上最年少での公式戦初優勝を果たした時、藤井と初対決した羽生は準決勝で敗れた。終局後、「藤井さんは将来必ずタイトル戦に出てくる方。ただ、私がそこにいるかは分かりませんが。そこが問題です」と語った。あれから4年9カ月後、レジェンドはそこに上がってきた。

「自分自身の気力を充実させて臨むということに尽きると思います」。夢のようなスーパースターの頂上対決から目が離せない。