藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が2年ぶり4回目の優勝を目指す、第16回朝日杯将棋オープン戦準決勝、豊島将之九段(32)戦が23日、東京都千代田区「有楽町朝日ホール」で行われた。持ち時間各40分の対局は、リードを奪った後手豊島が詰み寸前まで行きながら失着。先手藤井が165手で大逆転勝ちして、決勝進出を決めた。

藤井は負けを覚悟していた。右手でほおづえをついて目をつぶっている。明らかに自玉は詰んでいた。奇跡はここから転がり込んできた。豊島が間違える。首の皮一枚から巻き返して反撃し、勝利をつかんだ。「角換わりの激しい展開から、お互いに玉の薄い形になり、判断の難しい将棋でした。攻めが細くなってしまい、徐々に苦しくしてしまった」。

今年1月に名古屋市で行われた本戦1回戦の阿久津主税八段戦、準々決勝の増田康宏六段戦でも形勢をひっくり返して勝っている。逆転3連発で決勝に進出した。

藤井は今月5日に放送されたNHK杯準々決勝の中川大輔八段戦まで、先手番で24連勝中。未放映のテレビ対局も含め、これで先手番25連勝とした。

同時に同じ場所で、もう一方の準決勝、渡辺明名人(棋王=38)対糸谷哲郎八段(34)戦は、二転三転するスリリングな展開の末、渡辺が150手で勝ち上がってきた。

藤井対渡辺戦は現在行われている棋王戦5番勝負と同じカード。朝日杯では第12回以来、4年ぶりの決勝対決となる。「今期の朝日杯は課題が多いなかで勝ち上がったので、決勝ではよくできるようにしたい」と気を引き締めていた。