宇宙航空研究開発機構(JAXA)は28日、都内で昨年4月からスタートさせた宇宙飛行士選抜試験の合格者となった外科医で日本赤十字社医療センター勤務の米田(よねだ)あゆさん(28)と、世界銀行勤務の諏訪理(すわ・まこと)さん(46)の男女2人の宇宙飛行士候補を発表した。JAXAが新たに飛行士候補者を誕生させたのは2009年9月の金井宣茂さん以来、14年ぶりとなる。

米田さんは、95年生まれで東京都出身。19年に東大医学部を卒業後、東大付属病院に勤務。21年に日赤医療センターに入り、昨年10月から虎の門病院に派遣されている。向井千秋さん(94年7月、スペースシャトルで日本人女性初の宇宙飛行)、山崎直子さん(10年4月、日本人最後のスペースシャトル搭乗)に続く、3人目の女性宇宙飛行士候補となる。

米田さんは「医者として宇宙空間で何か人体に起こった時にキャリアが生かせるのではないか考えている」とし、宇宙を目指す起点となったのが「小さい頃に父から向井千秋さん伝記をもらったのがきっかけ。マンガだったが描写の中で、宇宙から地球をながめて感動してらっしゃる向井千秋さんの姿に感銘を受けた。そこから宇宙への思いが出てきた」と語った。

滞在中の米国からオンラインで会見した諏訪さんは77年生まれで東京都出身。07年にプリンストン大学大学院地球科学研究科を卒業し、08年に青年海外協力隊でルワンダに派遣された。10年に国連・世界気象機関(WMO)に入社。14年から世界銀行に入行し、上級防災専門官として勤務している。前回09年の選抜試験の不合格から2度目の挑戦で宇宙飛行士候補となった。茨城・つくば市のJAXA宇宙センターの徒歩圏内で育ち、「科学万博が行われて両親にねだって、何回も連れていってもらって宇宙に興味を持った」と振り返った。

JAXAの現役宇宙飛行士は現在、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の若田光一さん(59)、星出彰彦さん(54)ら6人で全員が男性。米田さんは最年少となる。今回の募集には過去最多となる4127人が応募し、2人は英語試験やプレゼンテーション試験、運動能力試験などを経て選抜された。2人はISSでの長期滞在や、米国主導の月探査アルテミス計画に参画し、月上空の新基地や月面基地でのミッションが期待されている。【大上悟】