上田清司参院議員の公設秘書の男性(当時、2020年8月に死亡)に2020年3月、埼玉県内で取材の機会を利用して性暴力をふるわれたとして、政治担当の元記者の女性が8日、国家賠償法に基づき、国を相手取り1100万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

民放労連放送スタッフユニオン、代理人弁護士が都内で記者会見し、明らかにした。

訴状によると、元記者の女性は20年3月24日、公設秘書とは別の上田議員の関係者に誘われ、会合に出席。会合後、ともにタクシーで帰宅していた際、秘書から車内外で強制わいせつ行為を受けたという。また同月27日には、上田氏の政治動向に関する情報提供を秘書に持ちかけられ、飲酒を伴う会合に呼び出された際、酒を飲まされて前後不覚の泥酔状態になった状態でホテルに連れ込まれ、強制性交を受けたとしている。

一連の出来事の後、女性は被害届を埼玉県警に提出し、受理された。県警は20年8月、準強制性交罪、準強制わいせつ罪について「起訴相当」と判断。秘書は書類送検された。秘書はその直後に自死し、不起訴となった。

弁護団側は、秘書の行動について職務権限を利用してふるった不法行為とし、上田氏についても、元記者に対するセクハラや性暴力を防止すべき注意義務を怠った責任があるとしている。

元記者の女性は、代理人を通じてコメントを発表。「私が提訴に踏み切った理由は、加害者に対する怒りもありますが、それ以上に、埼玉県で権力のある人が性に関する罪を犯しても加害者が守られ、被害者として理不尽に多々感じられることがあったからです」とした上で「わたしに不幸にして起こってしまった事件を自ら公にすることで同じ思いをする人が少しでも少なくなればという思いで提訴にふみきりました。それが、記者としての使命であると考えました」などとしている。