第8期叡王戦5番勝負を制した藤井聡太叡王(竜王・名人・王位・棋王・王将・棋聖=20)が17日、千葉県柏市で開催された「第8期叡王戦記念イベント」として、将棋AI「Ponanza(ポナンザ)」の開発者で7年後の車の自動運転の実用化を目指す企業、「Turing」山本一成CEO(37)と対談を行った。シリーズは、菅井竜也八段(31)の挑戦を3勝1敗で退けたが、2勝2敗で最終第5局を迎えた場合はこの日、同市で行われる予定だった。

午前10時30分から始まった対談のテーマは、「未来への挑戦、AIが人生に与えた影響とは」。お互い愛知県出身で、藤井のことをプロ棋士養成機関「奨励会」の時代から知っていたアマ五段の山本CEOと、ポナンザのインターネット対局を奨励会時代にしたことがある藤井とで話は盛り上がった。

藤井は7年前の2016年(平28)、奨励会三段時代にAIを使い始めた。序~中盤の構想と局面をどう判断していくかに課題を感じていた時だったという。局面の優劣が評価値で数値化されることで、「形勢判断の力を大きく伸ばすことができたと思っています」と効力を強調した。

その翌年にポナンザは、時の名人である佐藤天彦現九段に叡王戦の前身である「電王戦」で勝った。「実力を知っていたので、そのこと自体驚きではなく、ついにその時が来たかという感じでした」と冷静だった。

山本CEOは現在、ポナンザのAI技術を応用して車の自動運転の開発をこの地で進めている。「免許がないので、自動運転の発明を心待ちにしています。発明されたらぜひ」と購入の意思を示した。同時に、師匠の杉本昌隆八段の運転する車に同乗した時のことも話した。「師匠は運転がヘタで。(自分は)免許を取るのはやめておこうと思いまして」と笑った。

叡王防衛の後、藤井は今月1日に史上最年少で名人も獲得し、現在7冠。残るタイトルは王座だけだ。山本CEOから8冠全制覇について突っ込まれると、「(8冠の)チャンスは限られているので、まったくないというのはアレですが、できることなら生かしたいという気持ちはもちろんあるんですけど」と正直な気持ちも披露した。同時に「それ自体を目指すと思ってしまうと、可能性を閉ざされた時にどうなるのかと思ってしまいます」とも話した。

実際の研究の中で、自らの判断とAIの評価値の差が一致しない場面も出てくる。そんなズレについて、「(AIを)見ていくことで評価の理由がわかります。指し手を直接教えてくれるわけではないが、納得して取り入れます。活用することで、考え方やアプローチがわからなかった局面を少しずつ判断できるようになった感じはあります」と、利点も挙げた。

名人獲得の一夜明け会見で、「温故知新」という言葉を使った。自分なりのAI論で表現した。「AIで戦法が大きく変わってきました。以前指されていた形が再評価されることもあり、昔の将棋を見て新しい発見もあります」。

叡王戦では、初の振り飛車党とのタイトル戦だった。飛車を初形から動かすためAIの評価は低くなりがちだが、「指されてみて実際に手ごわく、苦戦しました。AIに近づくというよりも、いろいろと学んで自分の将棋を面白くしていけたらと思っています」と語った。

最後の自動運転について、先を読む商売の棋士として藤井は、「5年後くらいに実現してもおかしくないと思います。早く自分自身もこれで快適に移動ができることを心待ちにしています」と期待を込めていた。【赤塚辰浩】