安倍晋三元首相が昨年7月8日、奈良市内で参院選の遊説中に銃撃され、命を落としてから8日、1年となった。8日には、東京都港区の増上寺で一周忌法要が営まれる。

自民党幹事長や第2次安倍政権の閣僚として安倍氏を支え、党総裁選では2度戦ったライバルでもあった石破茂元幹事長(66)が、日刊スポーツのインタビューに応じ、安倍氏との思い出や、安倍氏亡き後の自民党の課題などについて、思いを語った。

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安倍氏が亡くなって1年。自民党には今も「安倍体制」が続いていると感じていると、石破氏は語る。その本質は「ものを言わない、異論を許さない自民党」だと説明した。

石破氏 安倍総理が亡くなられて、たしかに1年たったけれど、まるで徳川幕藩体制のように、「安倍体制」というものがまだ続いているのではないかと思う時があります。安倍総理は「この道しかない」という言葉を、色紙にもよく書かれていました。私は、これしかないということは世の中にはあまりないと思いますし、これは本当に正しいのかという検証は常に必要で、もし間違っていたら直していくことが政治としてあるべき姿だと思いますが、安倍総理の真骨頂は「この道しかない」という姿勢でした。異論を唱える者は敵と見なし、排除も辞さない。それを本当にやるというすごみがありました。

その後、岸田さんのように、マイルドな人がトップになっても、この異論を受け付けない体質というのはあまり変わっていないように思います。総務会でも、私が発言すると「またおまえか」みたいな空気になります。もしかすると、自民党の体制が減点主義のようになっているのかもしれません。意見を言ったり、ましてや批判的なことを言えば、点が減っていくから言わないと。昔は、大激論が自民党の当たり前の姿でした。

安倍氏が残した功罪について、客観的な検証は行われなければならないと考えている。

石破氏 例えばアベノミクスという政策についても、すべてが良かったわけではないでしょう。何が失敗だったのか、それを自ら検証し、次に生かす。それが与党の役目だと思います。野党が批判しても、世の中は変わらない。自民党の中でものを言えなくなったら怖いと思うのはそこで、結局国民のための政治にならなくなってしまう。もちろん、きちんとしたプロセスを踏み、党内で大きな議論をしたのちに決まったことには従う。それが、自民党議員のたしなみですから。

党内議論のあり方、そして、その議論のプロセスを重視すること。安倍氏亡き後の自民党に向けた「課題」には、その中にいる石破氏自身も、向き合うことになる。【中山知子】

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