東京電力福島第1原発にたまる処理水の海洋放出を巡り、中国からの発信とみられる迷惑電話が相次いだ問題で、福島県警に相談が74件寄せられていたことが29日、分かった。警察庁は28日正午までに31都府県警に対して計225件の相談があったとしており、福島県警への相談が最多だった。内堀雅雄県知事は29日の記者会見で、県内の公共施設にかかってきた迷惑電話は3000件に上ったと説明した。

復興の歩みを進める福島県浪江町で、17年3月から営業する海鮮料理店「海鮮和食処くろさか」では、海洋放出が始まった24日から約3日間で120件以上の迷惑電話があった。店主の黒坂千潮さんによると、中国の国番号である「86」で始まる電話が相次いだ。「何を話しているか分からなかったが、男の人の声で『ばーか』という声があった」と振り返り「ランチ時に電話が鳴りやまなくて困った」と口にした。

岩手県久慈市の水族館「もぐらんぴあ」では、3件の迷惑電話があった。担当者は「受話器を持てないほど爆音が流れたり、無言電話がありました」と述べた。また、片言の声で「なぜ処理水を流すの?」「あなたたちはばかなの?」などとも言われたという。

処理水の放出で観光への影響も出始めている。中国の複数メディアは日本への団体旅行のキャンセルが相次いでいると報じた。温泉地として人気がある大分県由布市内のホテルでは、10月までに12件ほどあった、中国や韓国、香港などの海外観光客の予約が8月中旬までに、全てがキャンセルになったという。【沢田直人】