自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件をめぐり、安倍派で裏金のキックバック(還流)が復活した経緯に関し、これまで当事者が認めていなかった内容が、自民党による派閥幹部への再調査の流れで表面化した可能性があることが、28日の参院予算委員会で明らかになった。

安倍派ではパーティー券販売ノルマの超過分キックバックについて、2022年4月、当時会長だった安倍晋三元首相が廃止を指示したが、安倍氏が死去した同年8月の幹部会合を経て、復活した。なぜ、だれが復活させたのか、これまで幹部の証言からは明らかにされていない。

この経緯をめぐり、質問した立憲民主党の辻元清美議員は、キックバック再開に関し、2022年1月に安倍氏が派閥幹部と会い、説明を求めたという報道があることに触れ、事実関係をただした。岸田文雄首相は「なぜそういう報道が出るのか理解できない。現時点で明らかにすることはしていない」とかわしたが、辻元氏は、その後の同年3月にも幹部が集まった協議が行われ、安倍氏や細田博之前衆院議長や西村康稔前経産相、世耕弘成前参院幹事長が集まり話し合いが持たれた可能性があることも指摘した。

2022年1月、3月の安倍派幹部会合はこれまで明らかになっていなかった。3月14日の参院政治倫理審査会では、立民の蓮舫参院議員が世耕氏に22年3月の会合について事実関係を質問していたが、世耕氏は「スケジュール帳にも記憶にも残っていない」と、否定していた。

辻元氏は「世耕さんが政倫審で虚偽答弁をしたのか、ということになりかねない。何のための政倫審だったのか」と指摘。聞き取り調査の詳細を語らない首相に、4月ともいわれる関係議員への処分の前に、調査の内容を公表すべきと主張したが、岸田首相は「党として対応を判断する」「政治責任を明らかにする過程の中で適切にタイミングを判断する」と、のらりくらりを繰り返した、

これに対し辻元氏は「政倫審でうそを言っていたかもしれない。国会をなめるんじゃない」と憤り「自民党の内輪の聞き取りだけで(処分を)決められる話ですか。そういうことをしていたら、自民党まるごと疑われる。自民党だけの問題ではなくなっている」とした上で、政倫審に出席した安倍派幹部4人を証人喚問に出席させるよう要求。「証人喚問で決着をつければいい。受けて立ってください」と呼びかけた。

しかし首相は「自民党として政治責任を判断するために調査を行っている」と繰り返し、証人喚問については「国会でご対応いただくこと」と原則論に終始し、質問に答えなかった。

裏金事件をめぐる自民党の再調査は、政倫審出席議員の発言内容の整合性を揺るがす事態に発展しつつある。