藤井聡太名人(竜王・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖=21)が初防衛を目指して豊島将之九段(33)の挑戦を受ける、将棋の第82期名人戦7番勝負第1局が11日、東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われた。

10日午前9時からの2日制で始まった対局は終始、互角のまま。終盤、先に抜け出しながら決め手を欠いた豊島に対し、冷静に対応した藤井が逆転。午後9時22分、141手で開幕局を制し、初防衛に向けて好発進した。第2局は23、24日、千葉県成田市「成田山新勝寺」で行われる。

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大変面白い将棋でした。「何をやってくるか分からない」豊島九段に対し、藤井名人が臨機応変にその場その場で対応して「備えができているな」という全体の印象でした。

特に光ったのが終盤3筋に香を打ち込んで歩を受けに使わせ、攻めで予想された打ち込みを消したところ。あの危機管理は見事です。さらに、3筋にタイミングよく跳ね出した桂が躍動していました。いい局面でいい手が巡ってきて、それを逃さないのが勝ちにつながるのだと思います。

対する豊島九段は9筋の歩を早めに突いたり、飛車を5筋に回して中央を直射するなど、巧みな作戦を用意していました。残念なのは終盤、時間を使わずノータイムで4筋に香を打ってしまった手。ほかの指し方があったと思います。日常生活でも「念には念を入れよ」とよく言いますが、そんな教訓を改めて感じさせられた局面でした。

開幕局からこんな大熱戦でしたから、第2局以降も見応えのある戦いが期待できそうですね。

(加藤一二三・九段)