こんにちは。先週、日本競馬で34年ぶりの珍事、馬の取り違いが起きました。新潟競馬に出走予定の馬が、実は同厩舎の別馬だったという衝撃の出来事でした。私が普段かかわる海外遠征の時は、このような問題が起こらないように日本側としてどんな対策が行われているのか、お話をしたいと思います。

海外遠征では、馬1頭1頭に埋め込まれているマイクロチップを利用して、馬のパスポートを作成して馬の識別番号、馬の模様、色の特徴やワクチン接種歴などが記載されている情報をさまざまな関係各所と共有します。人間のパスポートと同様に扱われ、海外レースの際は主催者側に情報を提供して検疫などで使用されています。海外遠征をしない馬はパスポートを作成していないので、厩舎で管理している各馬の識別番号を知っている厩舎スタッフは、数少ないと思います。

馬が海外へ到着すると、すぐに血液検査と尿検査、そしてマイクロチップを使って識別確認をされます。そして、ここからはそれぞれの国独自の識別確認をされていきます。私が特に印象に残っているのは、2016年、2021年にカリフォルニア州で行われたブリーダーズカップの時ですが、馬の顔や体の1カ所ずつ写真を撮って、そして馬の絵を描いていることに驚きました。アメリカ国内の馬は、マイクロチップだけでなく馬の歯茎に馬の識別番号をタトゥーされているので、確認しやすいようにしてあります。そして、識別確認を帰国するまで何回も行います。

今回の珍事が、海外遠征で百戦錬磨の森厩舎で起きた事は個人的には驚きでした。基本的にはどのスタッフも自分の厩舎の馬を間違えることはほとんどないと思いますが、2歳新馬、外国産馬で起きてしまったことは不運としか言いようがないと感じます。

いろいろな臆測などがありますが、私が言えることは、日本競馬全体が馬のマイクロチップの利用をより一層充実させる事が解決につながるのではないかと思います。また、今後も日本馬が多数海外遠征を行うと思うので、その時は日本馬がこのように管理されていると思って、観戦してもらえるとうれしいです。

(レースホースコーディネーター)